◆◆ 8、詩人の魂 三国時代から隋が天下を統一するまでの300年余りの間、江南では健康(今の南京)を首都として、次々と革命が繰り返され、孫権(そんけん)の呉から数えて六つの王朝が交替しました。 いわゆる六朝時代(りくちょうじだい)です。 その六朝の宋の時代、陶淵明より50年位後の人で、鮑照(ほうしょう)という詩人がいました。 唐代の作家に大きな影響を与えた人です。 鮑照の「白頭吟(はくとうぎん)に代(か)う」という詩の中に、 直きは 朱絲(しゅし)の縄の如く 清きは 玉壷の冰(こおり)の如し (清潔なことは白玉の壷に入った氷塊のよう) という一節があります。 ずっと後に唐の詩人 王昌齢(おうしょうれい)は、江寧(今の南京市)の丞として左遷されていた時、洛陽に旅立つ友人の辛漸(しんぜん)を、鎮江の芙蓉楼で見送りました。 その時に前の鮑照の「白頭吟に代う」を踏まえた詩を詠んでいます。 「芙蓉楼にて辛漸を送る」 王昌齢 寒雨 江に連なって 夜 呉に入る 平明 客を送れば 楚山孤なり 洛陽の親友 如(も)し相問わば 一片の冰心(ひょうしん) 玉壷(ぎょくこ)に在りと (洛陽の親しい人々がもし私のことを尋ねてくれたなら、 どうかこう答えて欲しい。 ひとひらの透明な氷が白玉の壷の中にあるような、 澄み切った心で私は生きていると。) 当店25周年記念の花未確認株から選別されたものに、「白玉壷」(はくぎょくこ)という白っぽい青花があります。 舌は決して大きくはないのですが、ほんの一点こぼれる位で、巻いてしまうと無点に見えますし、捧心は最後まで開きません。 スマートで清潔感があり、いい雰囲気をもった花として人気があります。 命名したのは所有者の新井さん。 中国で美しいものの典型と考えられている白玉。 その壷の中に入っている水晶細工のような透明な氷。 この詩のイメージからつけられた名前でした。 間違っても「シラタマコ」とは読まないでくださいネ。 (2001/3/8) |