20、洞庭湖 その周辺


 洞庭湖、そして岳陽楼ではたくさんの詩がつくられました。
最初に岳陽楼を建てたという張説(ちょうえつ)(18回、19回)の長男張均も、「岳陽楼の晩景」という詩を詠んでいます。


   晩景 寒鴉(かんあ)集い  
   秋風 旅雁(りょがん)帰る 
   水光 日を浮かべて去り  
   霞彩 江に映じて飛ぶ   
   洲は蘆花(ろか)を吐きて白く  
   園は柿葉(しよう)稀にして紅なり
   長沙 卑湿(びしつ)の地   
   九月 未だ衣を成さず   


 霞彩は辞書によると朝焼け、夕焼けの美しい彩りとあります。
花の色からの連想でしょうか、松下さんが選別したサラサに、「霞彩」(かさい)と命名して展示されました。


 湖南省の省都、長沙を流れる湘江の流域は、風光明媚なところとして知られています。
北宋時代の画家宋迪(そうてき)は、特に優れた八つの景色を選んで「瀟湘八景」と名づけました。


   平沙落雁   遠浦帰帆   山市晴嵐   江天暮雪
   洞天秋月   瀟湘夜雨   煙寺晩鐘   漁村夕照


横山大観も「瀟湘八景」の大作を描いています。



 湘江西岸にある岳麓山は、紅葉の名所として知られた景勝地です。
日本でも馴染みの深い、晩唐の詩人杜牧の「山行」という詩。
よく知られていますね。


   遠く寒山に上れば 石径斜めなり、
   白雲生ずる処 人家あり。
   車を停めて坐ろ(そぞろ)に愛す 楓林の晩、
   霜葉は二月の花より紅なり。


 この詩に因んで「愛晩亭」と名づけられた建物が、清風峡台地に建っています。
現在の建物は清の乾隆年間に再建されたもので、正面の題字は、ここ湖南省出身の毛沢東が書いたものだそうです。
岳麓山中腹には、268年創建の古寺、岳麓寺があります。
「岳麓山」(がくろくざん)という名は、Hさんが自分のサラサにつけていました。


 昨年の新花で大きなサラサ花が出ました。
とびきりの花というわけではありませんが、花持ちがよく、咲き始めてからも花が大きくなっていき、最後まで形が崩れません。
大株だったので、3人が分けて持ちましたが、当たりだったと喜んで、3人のうちの谷原さんがこの詩から「楓林」(ふうりん)と命名しました。
来年の花が楽しみです。


                             (2002/6/13)

目次へ    前へ    次へ

えびねと東洋蘭の店 すずき園芸