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           8 (2003/4/6〜
2003/10/5
 捨てる神様もあれば拾ってくれる神様もあるんですね。ことしは4倍だといわれてすっかり諦めていた杭州寒蘭が、実質的には、昨年と殆ど変わらない値段で入れることができました。
 これも日ごろのわたしの行いがよかったからでしょうか。斡旋してくれたSさんの話では、オール花芽付き、根もいいというので、その通りなら、高くても即金で買うと約束していました。

 Sさんが直接持ってきてくれた株は確かにいい株でした。ところが、検疫を通すために根を綺麗に洗ったとき、花芽を欠いてしまった株が結構でてきたのです。花芽のない株を高く買うわけにはいきません。
 また杭州寒蘭でない株も買えません。Sさんも兜を脱いでしまいました。おかげで私はほぼ100%杭州寒蘭といえる株を、ならしてみれば、去年と殆ど変わらない価格で手に入れることができたのでした。
 9月という時期に入れたのも正解でした。花芽はまだ10cm以下のものがほとんどで、傷みは全くといっていいほどありません。そんなわけで、ことしほど自信をもって商いできる年はないということになりました。

 店に来られない方には、ことしもご要望があれば通販いたします。花芽付きは1条2,500円で、花芽も1条と計算します。(3条花付きなら10,000円です)花なしは1条2,200円です。ほんのちょっぴり上っていますが、笑ってご容赦ください。
 その代わり杭州寒蘭であることは99%保障します。根も短いのが多いですが(山採りから時間が経っていない証拠)しっかりしています。生水苔で一年管理するのもいいでしょう。太い根が気持ちよいほど長くドンとでますよ。
 こんどの株は麗水地区でとったものだそうで、最も杭州らしい花が咲いてくれるはずです。


2003/9/28
 諦めていた「黄玉山」花が来ていました。私の一番大好きな杭州寒蘭で、展示会の時はいつも定位置において、心いくまで楽しませてもらっています。10条以上の大株なのでこないはずはなかったのですが、いま花芽は1cm少々、咲くのは大分遅れそうです。
 無点系の広い舌、形のいい捧心の深い白覆輪、そしてやや抱えた花形は、なぜか母親の胸に抱かれているような安らぎを覚えて落ち着くのです。薩摩寒蘭の「白妙」にもそんな母親の味を感じる私ですが、あなたはどうですか。

 「孤峰」も順調です。3枚葉の新芽(30cm)を入れて3条とかみそりですから、ことしは割ることはできませんが、埼玉のIさんが本家を上回る5条立ちに仕立てて花をつけました。嬉しいことにことしは1〜2条戻してもらえそうです。
 「孤峰」も「黄玉山」も捧心は合わさったままで開くことはありません。寒蘭愛好者のほとんどは、やや開く程度までは許容しても、万歳咲きは敬遠するところです。「吉祥山」などは例外中の例外といっていいでしょう。

 杭州寒蘭の特徴はなんといってもグリーンのよさと舌の白さです。これに花形が加わって、これぞ青花の決定版なるものを捜し求めているのですが、未だしの感があります。
 それでも、完全無点の「秀水」は、自分でいうのもなんですが、これまでのところトップグループをいくと見ています。新芽が来ての花芽ですから、ことしは花数は少ないでしょう。でも外した古木からいい当たりが出てきました。
 残念なのは「昆明湖」「翡翠」「三潭印月」「帰去来」「草楽」「白玉壺」などが花を休んでいることです。それぞれに味のある青花なのですが、救いは株がよくなっていることです。来年は花もみられるし、分譲も可能でしょう。
 それにしても、杭州寒蘭には振り回されっぱなしです。なかなか商売にはなりませんね。

2003/9/21
 杭州寒蘭の花芽ももう出るものは出た感じで、まだ見えないものは今年はお休みと考えたほうがいいでしょう。そこで皆さんの関心がある私のところの命名品の中間発表をさせてもらいます。

 店のPCの壁紙にしている「奔月」は順調です。花芽も2p以上に伸びて、先日は白石さんが「きょうのショット!」で取り上げていました。初花のときは青サラサ素舌、二度目に咲いた昨年は、終花になって舌に覆輪状にうっすらと色を載せました。
 刺毛素といったらいいのでしょうか。最後まで色が乗らない方がいいというひともいれば、かえって変化があって面白いと高く評価するひともいて、ともあれ関心度はc純唐ナす。
 いま約6条になっていますが、ことしは3条を残してあとは二人の人に配分しなければなりません。気がついたらそうなっていました。人気者の宿命でしょうか。ばらばらにしたあと勢いをなくした「侘助」の徹を踏まないことを祈るのみです。

 「峨眉山」はやっとゆとりをもてました。3鉢ほど花芽をつけて、他に手頃な古木吹かしなどもできました。明るく咲かせるのと暗くして咲かせるのと、見比べてみてあなたならどちらを選ぶでしょうか。
 一昨年鮮やかなピンク花であっといわせた「桃酔」は、昨年はピンクとは程遠い花で、「薄茜」そっくりでした。桃花の蕾は成長するにつれてグリーンからカーキ色に変わって、それからピンクになっていく特徴があるのですが、それも見られませんでした。
 ただ鉢の中には2株あったので、ことし花芽が来た株がピンクなのかもしれません。そうなら大変です。でもそうでなく「薄茜」そのものだったとしても、稀にあれほどのピンクで咲くことがあるとなれば、評価はまた一段と上ることでしょう。
 次回も中間発表のつづきをのせるつもりです。乞うご期待。


2003/9/14
 三年前のこの欄で、「捨てる」という本がベストセラーになっている話題を取り上げました。瀬戸内寂聴さんがごまんとたまった本を選別しながら捨てている姿が、TVで放映されていたのをよくおぼえています。
 確かに、捨てるというのは簡単なことではありません。我が家には三人の子供部屋がありますが、巣立ってしまった二人の部屋は、いつの間にか物置部屋に変身して、半分は使いもしないがらくたで埋まっています。
 だが、いざ整理しようとすると、色々思い出が詰まっていて容易に捨てがたく、そのうち面倒くさくなって放置され、さらにその上に使わなくなったものが積み上げられていく次第です。

 園芸の面でも同様です。九月は植え替えの時期です。それは同時に取捨選択するときでもあるのです。それしかない株は、どんなにみすぼらしくても、捨てるわけにはいきませんが、捨てるなリ処分してしまった方がいい株がどれだけあることか。
 皆さんの棚もよーくみてみてください。捨てる勇気があれば、恐らく三分の一は減らすことが出来る場合もあるのではないでしょうか。商売ともなるとさらに厳しく選択する必要があります。売れないものに水をかけるのは愚の骨頂ですから。

 そんなことはわかりきっているのですが、毎年捨てられないガラクタが増え続け、もうこれ以上太れば危険なところまできてしまったように思います。今秋こそスリムになろうーこれが今の心境でありモットーです。
 スリムになれば棚にゆとりができます。そうなれば私の仕入れ意欲も旺盛になり、新しい魅力のある品物が並べば、お客様もまた財布の紐がゆるむというものでしょう。「捨てる」効果は絶大のはずです。
 経済活性化のためにも、どうです、みんなでよーいどんで捨てようではありませんか。


2003/9/7
 3日から蘭鉢展が始まって、ことしも好調なスタートです。去年から始めたガラクタ市が人気で、二年目のことしも、立案者としては笑いがとまりません。もちろん成田のTさんの協力があったればこそのことですが。
 本来、ガラクタ市から来るイメージは、世田谷のボロ市のように、古いものから再利用する価値を見つけ出すものでしょうが(昔は古下駄の片方が売られていたそうです)最近ではボロ市も新品がのさばってきたようです。

 ことしのガラクタ市も目玉は新品です。Tさんの知り合いが作った鉢が、商売にはならない価格で出品されているのです。プラ鉢全盛の蘭ですが、せめて花が咲いたときぐらい、それなりの鉢に入れて欲しいという願いからです。
 作者は老後の道楽で陶芸を始めたとTさんから聞きましたが、どうしてどうして玄人はだしもいいところで、三橋マニアで鉢にはうるさいお客様も、手を出しているのが実情です。

 三橋さんといえば、展示会のメインはいうまでもなくこの人の作品です。互いに駆け出しの時からのお付き合いで、いまでは三橋ファンのお客様も少なくありません。それがことしはまだ品物が出品されていないのです。
 イギリスで立派な賞をもらって、一躍有名になって、もうちっぽけなすずき園芸なんか相手にしていられるか、なんて見限られたのかとついつい僻んだりしていたら、ショッキングなニュースが入ってきました。
 この5月に泥棒が入って、目玉の富貴蘭鉢などを根こそぎ盗まれてしまったのだそうです。うかつにもいままで全く知らなかったのですが、大変なショックだったことでしょう。わたしにも経験があるので察するにあまりがあります。
 つい僻んだりしてこらえてください。得心のいく作品を気長に待っています。

2003/8/31
 たぶんに泥縄的で恥ずかしいのですが、このところ杭州寒蘭の上手な作り方に、妙に積極的になっています。ことしは中国からの出し値が昨年の4倍に跳ね上がったときいて、頭に血がのぼったせいでしょう。
 相手が理不尽な価格吊り上げをするなら、こちらは作落ちしている株を何とか蘇らそうというわけです。気が遠くなりそうな話ですが、貧しきもの、虐げられし者のささやかな抵抗です。

 そんな折、ルーペのSさんが耳寄りな話をもちこんできました。いい花を選び出すのは得意のSさんですが、作る方はわたしと同じでいまいちなのが欠点。何とか上手に作りたいという点では相通じるものがあります。
 10年前にアモイから入れた杭州寒蘭は、どれも根の出来が素晴らしく、そこには繊維くずの玉みたいなものがついていました。恐らくそれが培養土代わりになっていたものと思われます。
 それが頭にあったSさんはインターネットでついにそれらしきものを見つけ出したのです。すぐ連絡をくれたあとは、一気呵成に事は進みました。N紡のロックウール。嬉しいことに、電話したら担当の方が間髪をいれずに見本を送ってくれました。

 アモイのものとは同じではありませんが、こちらも植物栽培用人工培地ですから似たり寄ったりのはずです。これからSさんと早速実験にとりかかります。成否は別にして、われながらその意欲をほめてやりたいところです。
 勿論平行してこれからも納得できる価格で花付き株を入れる努力はするつもりです。ロックウールがどんなに威力を発揮しても今年や来年に間に合うわけはないのですから。
 中国が途端に大好きになるような申し出がないものでしょうか。

2003/8/24
 北朝鮮もなかなか付き合いにくい国ですが、わたしはどうも中国と相性が悪いようです。店に遊びに来る中国人は、どなたも感じがよく、熱心で、いうことはないのですが、中国との取引では何度も泣かされています。
 3年前、杭州寒蘭を入れたときは、半分は花芽付きということだったのですが、着いてみたら花なしばかりでした。強く抗議して花付きばかりの条件でまた送らせたのですが、やはり付いていたのは4束のうちの1束だけでした。

 次の年もいくらか益しになった程度で、満足するには程遠いものでした。本来なら取引は止めて当然なのですが、作をかけて出てきた新芽をみると、またぞろ騙されて見るかといった気持ちになったのです。
 昨年はほんの少ししか入れなかったのですが、商社の人が手荷物で日本までもってきてくれたり、花芽もかなりついていて、お客様には好評でした。これだったらもっと沢山取ればよかったと悔やんだのですが後の祭りでした。
 花も初期の頃の杭州寒蘭と似ていて、緑の色合いがよく、透明感のあるものが多かったので、しばらくやめていたマニアがまた戻ってきたほどでした。杭州寒蘭熱がようやく高まってきた、そんな感じの昨年でした。

 そんなわけで、ことしもファンの期待に応えようと早めに注文をいれたのですが、戻ってきた答えは去年の4倍の値段でした。一瞬耳を疑ったことでした。4割アップだってべら棒なのに開いた口がふさがりません。
 途端にまた拒否反応がでてしまいました。選別されたものが上るのは、まだやむを得ないとしても、未選別株は宝くじと似たようなものです。法外な値段になったらやる人がいなくなり、折角の杭州熱も冷めてしまいます。
 中国とのお付き合いはしんどいなと暗い気持ちで、在庫の杭州寒蘭の世話に力を入れだしたこの頃です。


2003/8/17
 地球全体が狂っちゃったのでしょうか。そうとしかいいようがありません。ヨーロッパではいま異常な暑さがつづき、8月に入ってからは、40度を越す観測史上はじめてという熱波が押し寄せています。
 ドイツもフランスもイギリスも、8月の平均気温を10度前後上回っているというのですから気違い沙汰です。熱中症による死者が3000人を超したとなっては、もう戦争の惨禍に匹敵するでしょう。

 ヨーロッパの蒸し風呂に対して、アジア地区はまれにみる洪水と旱魃による大被害をこうむり、日本は日本で、東北地方は夏を忘れて、冷害による米などの不作が深刻になっています。
 わたしの作場でも、春蘭や寒蘭の新芽の伸びが目立って悪いようです。杭州寒蘭の「秀水(青無点)」や「昆明湖」は、まだ7月初旬並のできで、一ヶ月以上も成長が遅れている感じです。
 そういえばここ何年も、異常気象の報じられない年はなかったような気がします。それが人間による自然破壊のせいかどうかはわかりませんが、地球が絶えず動いていることだけはたしかでしょう。

 でも、そんな中で植物は必死に生きようとしています。ここにきて寒蘭の花芽があちこちで見られるようになりました。異常気象でも時期が来れば、忘れずに、確実に花芽をあげてきます。
 蘭を見回りながら、ふとトルストイの「復活」の書き出しが浮かんできました・・どんなに石を敷き詰めても、芽を摘んでも、春になれば草はよみがえる・・
 したたかに生きようとする植物の営みのなかに、教えられるものを感じたことでした。

2003/8/10
 気がついてみたらまたこの花の話か、というふうに話題になりやすい花があるものです。杭州寒蘭だと例の「吉祥山」がそれ。ことしも7月の後半から花を咲かせて、これで3年つづけて狂い咲きしています。
 それだけなら狂い咲きしやすいタイプなんだねですましてしまうのですが、ことしはいささか勝手が違います。本咲きより狂い咲きのほうがずうっといいのです。

 「吉祥山」の咲き始めは黙って100点満点です。知らない人なら、値段を見ただけですぐ飛びつくほど見事なものです。が、それは三、四日だけで、時間とともに評価はずるずる落ちていきます。
 捧心が徐々に開いて万歳してくるためです。寒蘭マニアの大方は、捧心はつつましく閉じているのをよしとする傾向があるのですが、この花はまったく逆行していきます。
 土佐寒蘭に「明鳳」という、大輪平肩で万歳咲きの有名な無点系のサラサ花があります。花形が瓜二つの「吉祥山」は、さしずめ杭州寒蘭の「明鳳」といえるかもしれません。
 ただ「明鳳」と違うのは、捧心にかかる覆輪が元から先まで深く入っているので、これはこれで見事だと評価する方がけっこういます。落ちてきた評価はまたするするとあがっていくのです。

 そんな「吉祥山」がもう半月もたっているのに、捧心が開いてきません。色もまあまあです。同時に咲いた「上天竺山」は、恥ずかしがってこそこそ逃げ出してしまいました。
 どうでしょう、お暇だったら一度お出かけになってご覧になってはいかがでしょうか。


2003/8/3
 アワチドリのことで千葉のSさんから問い合わせのメールをいただきました。いまHPのトップに載せているアワの「洛陽」は、自分がむかし登録した「ロマンの森」ではないだろうか、というのです。

 この花は、店のお客様が同じ常連客の棚から見つけて分けてもらったもので、無名でした。名無しは可哀そうと、燃えるような濃色花で円弁だったので、すんなり「洛陽」と命名したのでした。
 野生蘭の世界では、よく名前がだぶっていて混乱することがありますが、写真で見る限り、ひょっとしたら「ロマンの森」と「洛陽」は、同じものなのかもしれないほどよく似ています。
 Sさんは、久方ぶりにわが子に会ったような気持ちになって、メールをくれたのでしょう。私は同じ花であってくれればいいのにと思ったことでした。

 Sさんの話では昨年あたりから、アワの世界でも原種を欲しがる愛好家が増えているそうです。原種と人工ものの違いは、言うまでもなく、自然が生んだものと人間が意図的に作ったものとの違いです。
 自然では想像もつかないような超梅弁花だとか、三芸、四芸品が作出されて、最初はびっくりしてのめり込みますが、いつのまにか原種に安らぎを覚えるようになっている自分に気がつきました。
 ごく最近、常連客のHさんがどこで見つけたのか、「幸姫」とか「槙の尾無点」など、天然ものの名品をいくつかまとめて手に入れ、有頂天になっていました。私の所ではみな絶種したものばかりです。 
 羨ましい限りで、私もこれから原種のコレクターになろうと思います。


2003/7/13
 山口のKさんから思わず微笑んでしまうメールが来ました。しばらく前にドクダミ草とえびねのウイルスの話を取り上げたのですが、それに対する返事でした。
 Kさんのところでも、ドクダミと共生しているえびねには、病気は出ていないそうです。ただそこはかなり暗いので、そのせいがあるのかもしれないが、ともありました。

 明るい所より暗い所の方が病気が出にくいことは確かですが、そのあとKさんは、でもドクダミをあちこちに植えておきました、と書いてありました。
 声を出して笑いながら、ふと思い出したのが三年前のトマトです。ワクチン処理したトマトの樹液をえびねに移植すると、病気にかからないし、病気の株も直るというものです。
 けっこう読まれている野生蘭の月刊誌に載ったので、それは大変な話題になりました。すぐにトマトの苗を買いに走ったのはいうまでもありません。
 反響が大きすぎて批判の声も高く、この件はたちまちうやむやになってしまいましたが、三年経ったいま、樹液をつけて病気が治った株は一本もありません。

 さて、ドクダミはどうでしょう。いまのところ応答があったのはKさんだけですが、お金がかかるわけではありません。恐らくこっそり植えている方が他にも何人かはいらっしゃるのではないでしょうか。
 願わくば同好の士の多からんことを。夢があって、なんとなく楽しいじゃないですか。

2003/7/6
 上海に住む中国の愛蘭家からメールをもらいました。HPに載せている中国春蘭で、欲しいものがあるので値段を教えてほしいというもの。
 名前をあげてあったのは「蔡仙素」「賀神梅」「万字」「緑英」「翠鶴」などでした。それと、これはHPには載せていないのですが、一茎九華があるかと問い合わせてきています。

 いま中国はかなり富裕層が増えてきたようで、その人たちが競って、国の花である蘭を集め始めていると聞いています。私の所まで問い合わせがきたのもそのせいでしょう。
 二、三年前からそんな傾向がぽつぽつ出始めて、「緑雲」などが中国に逆輸入されている話はきいていました。ちょうど日本では中国春蘭がどん底で、セミプロのほとんどは手放していたようです。
 九華もどん底で「南陽梅」や「程梅」の花付き株を、2、3万円で手に入れて楽しんでいたら、昨年業者が来て1条4万円も出して持っていったのには驚きました。「程梅」は末端で10数万円もするそうです。

 私も欲の皮は突っ張っている方ですから、このチャンスは逃したくないのですが、残念なことに九華は売るものがなく、一花も中国に出せるほどのゆとりがありません。
 とくに「賀神梅」「万字」「緑英」は、増えはあまりよい方でなく、昔から偽ものが横行している、いわく付きの名品です。あればこちらがまだ手に入れたいくらいです。
 上海の方、そんなわけでお役に立てなくて申し訳ありません。堪えてください。


2003/6/29
 えびねではいつも大変お世話になっている、生産者のEさんの奥さんが亡くなった。ここ数年は健康がすぐれず、こんどの入院では、本人ももう戻れないかもしれないと感じていたようです。
 そんなことから、Eさんも万一の覚悟はしていたでしょうが、いざ亡くなったとなれば、その心中や察するにあまりがあります。慰めの言葉もありません。

 三金会(中学の同級生が月に一度第三金曜日に集まって、飲んで食べておしゃべりする会)でいつも話題になるのは、死ぬのはかみさんより先がいいか、それとも後かの問題です。
 かみさんには悪いが、女房の死を看取ってからでなければ死ねない、なんて殊勝な事をいう仲間はひとりもいません。みんな女房よりは先、それも元気なうちに死にたいというのが圧倒的です。
 われわれ昭和の一桁生まれは、例外なしに女房に負んぶに抱っこです。なんだかんだといわれながらも、好き勝手なことができるのは、かみさんが元気でいてくれるからです。
 皐月ブームのときは皐月三昧、えびねブームでは西ものからニオイ、コオズの一級品を、手当たり次第に集めて気勢をあげられたのも、Eさんの後ろに奥さんがでんと控えていたからでした。

 幸い息子さんが数年前から後を継ぐことになってがんばっているので、さし当って心配することはないのですが、一日も早く元気なEさんに戻ってくれるのを祈るばかりです。
 それにつけても、憎たらしい女房ですが、少しは大事にしなければと思ったことでした。

2003/6/22
 人間、断定的にモノを言ってはいけませんね。先週のこの欄で、杭州寒蘭の「月娥」がことしは、間違いなく2条のままだと書いたのですが、訂正しなければいけません。
 目線の反対側から結構太い芽が上っているのに気がつきました。後ろの葉も元気ですから、何年かぶりで3条立ちの花がみられるかもしれません。

 亡くなった黄業乾さんが、25年前に3条で花を咲かせて以来、花は毎年のように2輪ほどつけて咲くが、一向に増えることなく、いつの間にか1条減って2条となっていたものです。
 新芽の出は判で押したように一年おきで、ことしは間違いなく出ない年でした。それが出ていたのですから、まさに奇跡といっていいでしょう。嬉しい誤算でした。

 考えられる理由はひとつしかありません。二年ほど前から使い出した肥料が、効果をだしはじめたのかもしれません。うちのお客様で作りのうまい人が、押しなべて使っているものです。
 スーパーと普通のものとあって、見た目は変わりませんが、普通のものは臭みが少々強いようです。上手に作っている人達はみなスーパーの方を使っているようです。
 わたしは根がけちなものですから、値段が倍以上のスーパーは使いきれないで、もっぱら安い方に頼っています。「翡翠」や「帰去来」が休んでしまったのは、そんなせいかもしれません。
 グルメ時代の世の中、エサぐらいけちけちしなさんなと、蘭から叱られているような気がします。


2003/6/15
 杭州寒蘭の新芽がようやく出揃ってきました。まだかまだかと目を皿の様にして探して、太い芽が土を切っているのを見つけたときの喜びは、蘭をやっているものでなければわからないでしょう。
 「奔月」「孤峰」「飛竜峰」「峨眉山」と「秀水」は、一つですが、昨年に続いてまずまずの新芽があがっています。「西湖」と「草楽」も、先芽どまり1条で割りやすいように、芽をあげてきています。
 時期外れに翠緑弁桃舌で咲いて話題を呼んだ「一天湖」も、「西湖」らと同じ条件で、いい芽をあげてきています。期待を裏切らない花が咲いたら、争奪戦が大変なことになるでしょう。
 「峨眉山」は、ここ二、三年見違えるように元気になって、昨年の12月11日に外した古木1条からは、太い芽が二つもでて、もう1cm以上に伸びています。

 目を見張るのは、昨年咲いた青花のなかで1の「横尾の青」。しっかりした4条の株から新芽が3本、どれも勢いのある芽です。外してあった古木2条からも、当然のように、太い芽があがっています。
 残念なのは「下天竺山」「帰去来」「翡翠」それに「月娥」です。まだどこにも新芽は見当たりません。秋に花は多分見られるでしょうが、奇跡が起こらない限り、売り物は無理でしょう。
 「月娥」にいたっては、四分の一世紀の、増えない“実績”があります。昨年新芽をあげて後ろが落ちて2条ですから、ことしは確実に2条のままだと断言できます。
 いやはや、商売にならない杭州寒蘭がメインだなんて――変わった店だよねえ、まったく。


2003/6/8
 紺屋の白袴ではないけれど、我が家の庭は、誰も手入れをしないので、まさに雑草天国です。いまはドクダミの白い花が真っ盛りで、名に似合わず風情があります。
 このドクダミ、解熱、便秘、美肌には葉茎を煎じて飲み、切り傷、やけど、腫れ物には生葉を貼ると特効があるそうですが、最近耳寄りな話をききました。本当なら大変です。

 その話をしてくれたのは、朝昼晩にもよく登場するMさんで、学校の先生です。病気(ウイルス)のえびねだって、捨てないで庭植えして楽しめるものがたくさんある、と話していたときのことです。
 Mさんはさりげなく言うのでした。そんなえびねを庭のあちこちに地植えしていたら、たまたまドクダミの生えているところのえびねが、いつの間にか綺麗に咲いているのに気がついたそうです。
 花にも葉にも病気の兆候はまったくみられなかったので、鉢上げしてみたところ、翌年も綺麗に咲いたそうです。「二、三年して再発したときは、またドクダミと同居ですわ」と静に笑っていました。

 三年前ある雑誌に、ワクチン処理したトマトの樹液で、えびねの病気が治るという記事が出たことがありました。早速買いに走ったのはいうまでもありませんが、トマトの売り上げに貢献しただけでした。
 こんどは、いい加減な事を口にする人ではありません。教育に熱心で、敬意さえ抱いている先生の話です。病気の株、怪しい株に軒並みドクダミを植え込んだのはもちろんでした。
 だめもとだっていいじゃないですか。ドクダミで夢と希望を与えてくれて、先生どうもありがとう。


2003/6/1
 ウチョウランの月がやってきました。ことしは11日から23回目の展示会を開きますが、いまのところタイミングはずれていないようです。いまは1割ほどが咲き始めたところでしょうか。

 この20年の間にウチョウランの世界は、大きく様変わりしました。当初は山採りものだけで品物が少なく、争って買い求めたので、名品は展示会の初日で殆ど売りつくしたものでした。
 紅1点花であれば黙って10万円からのスタートで、100万の大台をつけたものも珍しくありませんでした。専門の園芸店が、雨後の筍のように出来たのは当然のことです。

 だが、売り手市場のおいしい商売は、10年と続きませんでした。いま流行のバイオのおかげで、天然では考えられない、ほぼ究極の花が、掃いて捨てるほど多く作られだしたからです。
 ゆっくり、のんびりやっていれば、いまでも園芸店は一年の稼ぎをここでとろうと囃したて、やめてしまった昔のファンも、まだ目の色を変えて東奔西走していたかもしれません。

 慌てる乞食は貰いが少ないとはよくいったものですが、慌てないのも取り残されそうで、なんとなく不安なのが現代です。値段は目まぐるしく変わっても、ウチョウランの愛らしさは変わりません。
 昔から見れば、1本がただみたいな値段で買えるウチョウランの値打ちは、同じものの株立ち作りにあると思います。10本以上の株にするには、数年のコンスタントな管理が必要です。
 大株作りはあなたの平和のバロメーター。付加価値はそこにつけたいのですが如何でしょう。


2003/5/25
 新型肺炎(SARS)が衰えをみせません。台湾は全土が渡航自粛勧告エリアになって、いまや中国を上回る感がありますが、現状を正しく世界に報道している姿勢は、見習うべきで好感がもてます。
 日本観光の台湾の医師の発病で、対応にあたふたする当事者の弁明を聞いていると、自分の国ながら本当に情けなくなります。救いは関係のホテルやレストランが、すすんで自主休業したことでしょう。

 タダでさえ不景気にあえいでいるのに、安全宣言がでるまで営業を休むというのは、命取りにもなりかねません。できればのらりくらりとうやむやに逃れたいところでしょう。
 でも、それをしたらそれこそ本当の命取りになるのではないでしょうか。第一に考えるべきはお客様の安全です。そうすれば後で倍になって戻ってきてくれるでしょう。損して得とれですね。

 えびねの世界でも十数年前にウイルス騒動がありました。病気の株が燎原の火のように広がって、多くのファンが去りました。わたしも不売宣言をしました。
 売らなければ商売になりませんが、売ってもすぐ病気が出てはお客様は戻ってくれません。すずき園芸に行ったら靴まで消毒しろ、とまでいわれても、目鼻がつくまではじっと我慢の子でした。
 それがいまではどうでしょう。鼻歌交じりで楽しくやってます。ウイルスに面と向き合って、うやむやにしなかったのが活路をみつけてくれました。
 先日、むかし常連だったお客様が「天竜梅」を買ってくれました。ほんと、嬉しかったですねえ。


2003/5/18
 遅く咲いて散るのが早めで、ことしのえびねはとても慌しいものでしたが、みなさまのところはどうでしたでしょうか。私のところではニオイ、コオズはまずまずのできで、少し作りに自信ができました。
 「華清宮」がこれまでになくよく咲いて、お客様からも褒められて、一桁の定価はあまりにも安くつけすぎたかと悔やんだことでした。
 「白蓮」も自分でも驚くほどの出来でした。たいして肥料をやってはいないのですが、後ろのイモ(球根)を二つ以上つけて、二年じっくり育てたのがよかったのでしょうか。

 お客様の一人に、ニオイエビネをやっこにして、さらにそれから押し子まであげた方がいます。商売人にとっては、よだれが出るような話ですが、それがことしだけのことでないと聞いて驚きました。
 表面に張った水苔の下には一握りもある肥料が二箇所にどんと置いてありました。昔は四箇所において、株をとろけさせた失敗もあったそうですが、苦労の末、極秘のノウハウをみつけたそうです。
 見るからに肥料が効いた姿をしていて、この株をお客様がもっていったら、まず間違いなく作落ちさせてしまうだろう、という気がしました。
 その点、私のところのえびねは、嫁入り先で、作上がりすることはあっても作落ちする心配はまずありません。なぜなら肥料は殆どもらっていないからです。
 こんな負け惜しみをいっていますが、本音は、爪の垢でも煎じて飲みたいところです。

2003/5/11
 これまでに出版されたえびねの本を見ると、ウイルスにかかった株は、焼却する以外に治す方法はないとあります。事実、もう30年以上もえびねを育てていて、病気が治った株はひとつもありません。
 何万円も、いや何十万も出した株も、泣く泣く処分したものでした。綺麗な花がむらむらになっては、生き恥をさらしているようで、葬ってやることの方が慈悲だとも思います。

 ただ、葉に症状はでても、花の方は健全な株と殆ど変わらないというものもけっこうあります。白花や黄色系から緑花、弁元が白く抜けて弁先にかけて色が濃くのるものなどは、十分鑑賞に堪えます。
 そんな株まで処分してしまうのはどんなものでしょうか。先日、ベテランのNさんが、病気が出て隔離していた名品を、庭植えで楽しみたいと求めていきました。
 昔はいざ知らず、いまは感染即発病なんて考えている人はほとんどいません。どの株もウイルス・キャリアーだとみる人も多く、たまたま管理が悪いと病気になってしまうのだと思っています。

 ウイルスになったら枯れてしまうと昔はいわれましたが、面倒をみてやれば、ほとんどの株は元気に増えていきます。花の観賞価値もそれほど落ちないとしたら、なぜ葬る必要があるのでしょうか。
 病気のえびねだって生きる権利はあるはずです。山で幸せだったものを、無理やり里におろして病気になったから焼却だ、ではあまりに人間どもが勝手すぎます。
 病気のえびねにも生きる権利を与えよ。こう考える私は間違っているでしょうか。


2003/5/4
 ニオイエビネの桃花に「雛の宴」という名前がついたことを朝昼晩でとりあげたら、桃花に対するいろいろな情報がよせられて大変面白いなと思いました。
 「島の輝」を普及させたMさんが噂を聞いて早速見に来てくれました。開口一番これは「謳歌」という御蔵島産の桃花と非常によく似ているという話でした。

 この花は千葉のSさんが湘南のK園芸から掘り出したもので、宴と同じように開花して二、三日ぐらいまでは薄紫で、それから色が出てくるというのがそっくりだとのことでした。
 ただ、宴の方が側花弁の色が白く抜けていて、やさしくていいかなあ、ともいっていました。いずれにせよ、こういう花が一本だけぽつんとでることはないでしょうから、兄弟木なのでしょう。
 残念なのは、「謳歌」をもっているSさんはじめ数人が、みんな作落ちさせてしまって満足に咲いていないことです。したがって知る人もほとんどいません。
 ニオイには滅法詳しい第一園芸のMさんも特に印象がなく、「雛の宴」には「こんなピンク花ははじめてみた」と、デジカメに慎重に収めていました。

 えびねもそろそろ盛りを過ぎて、フィナーレを迎えようとしていますが、ことしは「青嵐」と「雛の宴」の二大スターが話題を独占したシーズンのようでした。


2003/4/27
 霧島園の看板になっているニオイエビネの桃花「霧静香」が、顔色を失いそうな花が咲いてきて、また一段とえびねのボルテージがあがってきました。

 数年前、千葉の人が御蔵島から入れたニオイの中に、ピンクの花があって、そのイモを2球わけてもらったHさんが友人に作ってもらっていたのが、ことし初めて花をあげてきました。
 千葉ではその翌年に咲いた花がピンクにならず、その後その株がどうなったかはっきりしません。こちらのも蕾は薄い紫で、下の花が咲き出しても紫のままなのでがっかりしていました。

 ところが3、4日たったころから変わってきました。来る人が一様に「これはいいピンクだね」とほめそやします。桃花で有名な「朱鷺」や「コオズ・ピンク」が霞んで見えてきます。
 Hさんたちは薄紫で咲きだした花に失望して、ただ同然で手放してしまうところだった、と苦笑いしていました。それにしても、蕾のうちからピンクにならないのはこの木ぐらいでしょうか。

 ニオイエビネは自生していた時の花色が、鉢上げすると翌年は落ちることがありますが、力がつけば元の色にもどります。だから鉢上げしていなくても安心して求めることができます。
 その点、コオズはジエビネと同じで、色変わりするケースがあるので、うっかり飛びつけません。Hさんが迷わずイモを分けてもらったのはまさに正解でした。
 さあ、このピンク花、どんな名前をつけてもらえるのでしょうか。


2003/4/20
 先週、鹿児島の霧島園にいってきました。こちらの展示会のこともあって、日帰りという慌しい日程でしたが、無理して出かけただけの甲斐がありました。
 なによりニオイエビネの作りが見事でした。三年前に初めてたずねた時もびっくりしましたが、ことしも同様でした。サーモンピンクの「霧伝説」には圧倒されました。

 お客様のKさんが早々と「霧の幻」を咲かせて、店に飾ってくれていたのですが、本家の幻をみたら、これが同じものかと目を疑うほどでした。
 極端な言い方をすれば、霧島園にかかったらニオイエビネに駄花なし、ということになります。私の店では並でしか売れないものも、あちらで作れば名前をつけたい花にまで変身してしまいそうです。
 作りに関しては褒められたことがない私は、どこかそれを認めて胡坐をかいているところがありますが、園芸で一番大事なのは、その花のよさを最高に引き出す腕を磨くことだ、と知らされました。

 少々年をとりすぎていますが、霧島園の爪の垢でも煎じて頑張りたいと思います。が、取りあえずはこれまでに選別した「華清宮」「望郷」「御蔵源流」などをあちらで作ってもらおうと考えています。
 こちらでも別格扱いされているニオイエビネですから、鹿児島で本咲きしたら、ひょっとしたら霧シリーズの上をいくかも、なんてうぬぼれているのですが・・


2003/4/13
 11日から上野の盆栽会館で始まった日本えびね業者組合の展示即売会。ことしは開花が遅れているので、いささか心配していたら、まったくの杞憂でした。
 長年決められた日程で商売してきているので、時期が早いぶんには、きちんと咲かせてくるのは朝飯前のようです。その点、成り行き任せの私とは大違いです。
 不精をきめこんできたせいで、展示会の日程を通知しても、お客様の方が「まだ咲いていないだろう。見ごろは週末ぐらいかね」と、勝手に日程を変更してしまいます。
 だから16日からのことしの展示会も、スタートは閑散としたものになること間違いなしですが、業者組合の方は、羨ましいほどに、朝からにぎわっていました。

 二階の展示場はゆったりとして、一部のレイアウトはえびねの美しさを最大限に引き立たせていました。欲を言えば全体にそうあってほしかったのですが、少ない人数では厳しかったのかもしれません。
 それと、ことしは嘗ての自然種の名品が目立ったことです。交配種ファンには申し訳ないけれど、「織姫」や「光琳」「桔梗の姫」などの天然ものに接するとなぜかほっとします。
 業者ですから人工交配ものも無視できないでしょうが、自然が生んだ名品を保存、普及するのも業者組合の大きな使命のはずです。
 そのえびねの流れが天然ものに向き始めているのを敏感に感じさせることしの会場風景でした。


2003/4/6
 米大リーグの話題がにぎやかです。ヤンキースの松井が開幕第一戦で、初打席初安打初打点の幸先のよいスタートを切って、元野球記者としては、ほっとして肩が軽くなりました。
 私は松井がデビューするはるか前の記者で、本人と直接会ったことはないのですが、大スターになるには今ひとつ真面目すぎるのが欠点ではないかと感じています。
 それだけに開幕早々にヒットが出るのと出ないでは、これからの松井に大きく影響すると思っていました。日本からの期待が大きいだけに、無安打が続けば大事になっていたかもしれません。
 これで本人もほっとしたろうが、こちらもやれやれでした。その点、やったと手放しで喜べたのは、野茂の開幕戦完封勝ちです。

 メジャーを代表するランディ・ジョンソンと投げ合っての完投で通算99勝は、どんなに褒めても褒めすぎにはならないでしょう。男の中の男です。実に大きく見えます。
 みずから大リーグへの道を切り開いて、新人王に輝き、アクシデントに見舞われて花の命は短かったかと思っていたら、不死鳥のように復活しての大活躍です。
 もし開幕戦で負けていたとしても、それは野茂にその日の勝運がなかっただけで、大投手としての価値が傷つくことにはならないでしょう。それだけの“大物”になっています。
 唐突ですが、えびねの中のえびねであるニオイと野茂とが、私にはなぜかダブって見えます。


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