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           3 (2000/10/1〜2001/3/25)
2001/3/25
 宋梅にはよく2タイプあるといわれます。まあるい梅弁と水仙弁にちかい花の二つで、蘭寶ャ史にもそう出ています。勿論作り方によって梅弁が水仙弁で咲くことはありますが、いくら上手に作っても水仙弁タイプは梅弁で咲くことはないようです。
 どちらのタイプが好きかは人それぞれですが、花を見て買わないと、後で悔やまなくてはならない破目になりかねません。

 ちょっとニュアンスは違いますが、中国奥地の蘭で有名な「雲南雪素」も、大方の人のそれは、雲南雪素系の素心であって「雲南雪素」そのものとは似て非なるものだと思います。
 この蘭は松村謙三代議士(故人)が命名したもので、元木は雲南植物園でいまも大事に作られています。蘭の分類でいうと細葉蓮弁蘭の緑桿白(素心)で、似たものは雲南から四川、南はベトナムの方まで広範囲に分布しているようです。
 奥地の蘭ブームで最近は大量にこの緑桿白が輸入され、みな「雲南雪素」で売られています。大きな違いはないのですから、別に文句をつけることもありません。

 でも、わたしはこだわりたい。昔から「松村雲南」を作っていますが、欲目でなしにひと味違うと思うのです。もっといい緑桿白の花もあるかもしれません。が、それはそれ。毎年花が来るたびに「これが雲南雪素だ」と密かに自負して眺めています。
 あなたもこだわる方ですか、どうですか。


2001/3/18
 一体どうなっているのでしょうか。狐につままれているような気分です。でもこれは作り話ではありません。
 三年前、旅で知り合った奥さんに、イトラン白花をプレゼントしました。黒の楽鉢に入れて「香りを楽しみなさい。うまく来年も咲かせられたら、また何か上げますよ」とはいったものの、また咲かせられるなんて思ってもいませんでした。

 翌年、また旅であったら「咲いたわよ」というのです。「それはよかったですね」と答えたものの、私は全く信じていませんでした。そして去年の暮れ、今年も花がきたというのです。駄目にする人のほうが多いイトランのことです。
 そんな馬鹿な、嘘もいい加減にしてほしい、もう蘭の話はしないことにしよう、私は本当にそう思ったことでした。

 ところがどうでしょう。先日ご主人と一緒に蘭をもって店に見えたのでした。驚きました。私があげた鉢に間違いありません。花がごっそりついているではないですか。さらにあきれたのは、痛んだ根が一本もないことでした。
 水は霧吹きでやり、鉢はドバトに何度も倒され、足りなくなった土はそこいらの鉢の泥土で間に合わせ、肥料もやっていませんでした。どうなっているのでしょうか。私は園芸店のおやじを辞めなければいけません。


2001/3/11
 今年もまた誕生日の3月8日にウチョウランの水遣りをはじめました。少し早いかもしれないけれど、誕生日なら忘れることがないので安心です。
 それにしても一年の早いこと。お餅を食べたばかりなのに、もうまたお餅を食べるなんてと、人は一年の早さをたとえますが、ウチョウランでもつくづくそれを感じます。

 早いと言えば人の一生も早いですね。6度目の年男になりました。古来稀なりの古希を2年も通り越してしまったのですから、我ながら驚きです。
 昭和20年の終戦の前、当時16歳の私は人生20年(お国のために殉ずるから)と、何の疑問もなく思っていました。
 それが敗戦で生き延びて以来、不惑の40は大いに迷いながらもすぐ50を迎え、あっという間に還暦、さらに古希。このままでいくと喜寿はおろか傘寿、米寿も・・・それはないか。

 ともあれ人生大いに楽しませてもらっていますが、それにしても進歩の無いこと。とくにウチョウランは年々ジリ貧なのです。
 仁王崩れの交配物の氾濫に嫌気が差し、天然物の名品を増やそうと、決意はけなげなのですがいけません。
 無点の「槙の尾」(ウチョウランを始めるきっかけになったピンク花)はすでになく「紅峰」「白蓮」も絶えました。今年はさてどんなことになるのでしょうか。


2001/3/4
 今月は春蘭、寒蘭の植え替え時です。暑さ寒さも彼岸までといいますから、理想を言えば下旬から始めるのがいいのですが、四月は一番忙しいえびねの時期が控えているので、今から始めないと間に合いません。
 これまでつい不精して、植え替えをサボったために、どれほど苦い涙を流したかしれません。それもいい蘭、大事な蘭に限って、根傷みをおこすから不思議です。

 今回は危うくセーフでした。最も人気の高い杭州寒蘭の「下天竺山」ですが、一年半前に植え替えており、昨年は先芽止まりに花がきて、新芽も1センチほど土を切っていたので、花後上土だけ替えておきました。
 まだ植え替えして二年たっていないのだから、今年は替えなくていいかなと思ったのですが、なんとなく虫が知らせたのかもしれません。
 開けて愕然でした。9本の根のうち5本がほとんど腐っているではないですか。不精を決め込んでいたら、また当分花は見られない羽目になっているところでした。慌てて他の鉢も開けてみたのですが、三年目のものでもまあまあでした。

 しかし私は決めました。東洋蘭の水遣りは迷ったらやるな、といいますが、植え替えは迷ったらすぐやれ。


2001/2/25
 28日から春蘭の人気コンクールが始まります。もう数年前から始めているのですが、昨年はクマネズミの襲来にあって中止せざるを得ませんでした。毎日数鉢の花や新芽がやられていくのですから、たまったものではありませんでした。
 たった二匹の仕業だというのがわかったのはニ、三か月あとで、捕まえてからはぴたりと被害はなくなりました。よそではまだ悩まされているところもあるようですが、このぶんなら今年は安心してやれそうです。

 人気コンクールは、お客様が愛培した春蘭を持ち寄って、期間中に来店したお客様に、一番気に入った作品を一点投票してもらい、最高得点を競うものです。bP賞に輝いた人には、私の店から賞品として、欅窯の春蘭鉢を贈ることにしています。
 コンクールといってもしゃちこばったものではありません。一年間丹精したもののなかには、ちょっと自慢したい出来栄えのものもあるでしょう。そんなものを持ち寄って、わいわいがやがや楽しいひと時を過ごそうというのが狙いです。

 皆さんそれぞれ作りには工夫を凝らしているので、大変いい勉強になります。お世辞にも作がうまいとはいえない私にとっては、教えられるいい機会でもあります。それを思えば、賞品に出す鉢の出費など安いものです。どうぞ、ふるってのご出品、お願いします。


2001/2/18
 お恥ずかしい話ですが、中国春蘭の「緑英」を持ったのは2日前がはじめてです。二十数年東洋蘭を商売にしてきて、そんな馬鹿なことはないだろうといわれそうですが、そうなんです。

 というのも商売を始めて直ぐ「蘭寶ャ史」を頂いたのが原因です。この本は東洋蘭関係の世界では大変権威があり、ただ持っているだけで、一目置かれたものでした。
 この本で見る「緑英」の写真は、平肩できりっと締まった咲きかたをしています。ところが日本で流通している「緑英」は、色は濃いけれど落肩で、とても本と同一のものとは思えませんでした。

 そんな時、師匠の中村さん(故人)が落肩しない「緑英」があるというので手に入れました。数日して別の人が「清河梅」の花をもってきました。これが「緑英」と全く同じ花で、さらに数日後、権威のあるHさんが来て「これは集円です」と断定したのでした。
 以来、まだどこかに落肩しない「緑英」があるはずだと思うと、落肩する「緑英」を手に入れる気がしなくて今日まで来てしまったのです。

 こんど出た蘭寶ャ史の日本語版では、「緑英」はウ字肩、花幹は青色とでています。中国語が読めれば何のことはなかったのですが、とんだ回り道をしてしまいました。それにしても写真は怖いですね。

2001/2/11
 中国・紹興市の今年1月の蘭の市場価格をみると、緑雲についで二番目に高価なのが万字になっています。1芽が700元から1200元というから、日本円で1万円から1万6千円にもなり、寰球荷鼎の倍もするのだから驚きです。
 日本でも20年ほど前は、品物がなく、駒場バラ園が手に入れていると聞いて、見せてもらいに行ったら、前の晩に盗まれてしまった、なんてことがありました。

 万字は中国春蘭の四天王の一つで、またの名は鴛湖第一梅。この花の特徴は、棒心の先に少し紅をかけることと、僅かにあごをしゃくった咲きかたをすることですが、昔の人が持っていた万字の殆どは贋物で、集円などを掴まされていました。
 日本には松村万字と黒崎万字があります。また聞きですが、黒崎さんによれば、松村万字は花がくればいい花が咲くが、黒崎万字は木が出来ないといい花が咲かない、とのことでした。

 そこで両方手に入れて作ってみたのですが、そんなことはなく、どちらも同じ見事な花でした。違いがあるとすれば、松村万字の方が、葉の痛みが少し早いようです。
 今でも数は少ないようで、この間株分けした余剰苗をお買い得通販コーナーにのせたら、間髪をいれずに売れてしまいました。内心びっくりしたのですが、中国の価格表を見て、なるほどと納得したことでした。


2001/2/4
 私の店でやる春蘭の展示会は、この14日からですが、昨秋結成された日本中国蘭協会の春蘭展が、早々と日本橋・三越店で行われました。
 7回催事場には所狭しと展示品、売品がならべられて、主催者の意気込みが感じられました。多くは中国奥地の蘭でしたが、時期に上手に合わせて、花の質も高く、見ごたえがありました。いま少しスペースがとれていたら、もっと良かったろうと思いました。

 それにしても限られた展示期間に、ベストの状態で花を飾った関係者の努力は大変だったろうと思います。私など自分の店で展示会をやるものですから、開花が遅れても一向に気にしません。
かえってお客様の方が「見頃はあと一週間ぐらい?」などと、電話で訊いてくるものですから、すっかり甘えてしまっています。デパートではそうはいきませんから、本当に頭の下がる思いです。

 幸いなことに、私どもの展示会は、何の努力もしないのに、まあまあの状態で迎えられそうです。奥地の蘭はとても勝負になりませんが、一株一株愛情を込めた点では自信があるのですが・・まあ見てやってください。


2001/1/28
 昨年の今ごろは「宋梅」をとりあげていました。中国春蘭を語る時、真っ先にでてくるのがこの「宋梅」になるのは仕方ないことです。なんといっても中国春蘭の代名詞であり、代表花なのですから。

 でも別の観点から無視できないものに「玉梅素」があります。ようやく笑い始めてきました。今年は例年より緑が濃い(この傾向はイトラン白花にも出ている)ようですが、小形で可愛い花です。
 素心のなかでは「蕭山蔡梅」とともに数少ない梅弁花で、カブトがあるのが特徴。発見されたのが康煕年間(1662から1722)とあるから「宋梅」よりも古い花です。貫禄ですね。ちなみに「宋梅」は乾隆年間(1736から1795)ですから、だいぶ後になります。

 「玉梅素」の花は、時に地面の中で開いて、上がってくることがあります。そんなときは白花に近く、覗くと喉の奥にわずかに薄い紅をかけていて、それがまた何ともいえない風情なのです。
 「老文団素」や「楊氏素」のような純素心とは違った桃腮素だけれど、中国蘭をやるなら絶対に欠かせない花の一つだと思うのですがどうでしょうか。そうだそうだといわんばかりに、今いい香りを出しています。


2001/1/21
 今年は春から縁起がいいようです。だいたい私は勝負運がなく、宝くじはただの一度も当たったことがありません。新聞社にいたころ、同期の競馬記者の情報をかきあつめて、何とかダービーを当てようとしましたが16連敗でした。
 そんなわけで、この商売に入ってからは、賭け事は一切しませんでした。たまたま去年の暮れ、木姿で杭州寒蘭の良花を当てるHさんの慧眼をたよりに、ジャンボ宝くじをみんなで買ってもらったのですが、やはり私はかすりもしませんでした。

 ところがどうでしょう。鉢の陶芸家三橋俊治さんの、大丸での新作展を祝う会(13日)で、異変がおきました。80名を越す出席者の中のくじ引きで、私は透かしの富貴蘭鉢(数万円相当?)を当てたのです。それだけでも大変なのに、まだおまけがありました。
三橋さんがマイクで「丸の透かし富貴蘭鉢はこれが最初で恐らく最後です。透かし鉢としての価値はともかく、希少性があります」といったものだから、周りの知り合いからねたまれること。三橋さんが大先生になればなるほど、価値はうなぎのぼりでしょうから。
 そして15日。こんどはHPの東洋蘭ネットワークで3等当選のメールが入り、東洋蘭オークション・クーポン券1万円をいただいた。ウハウハしていたら、さっそく陰の声で「好事魔多し、だぞ」だって。ドンマイ、ドンマイ。


2001/1/14
 今年はまた「人気コンクール」の復活を考えています。昨年は予想もしなかった邪魔が入って急きょ中止にせざるをえませんでした。
 例のクマネズミの襲来でした。どういうわけか花が好きなネズミで、毎日一、ニ鉢が被害に遭うのだからたまったものではありません。
 練馬のEさんは、広東鉢に植えた「宋梅」の株立ちに、花を十数本あげて持ってきました。見事な出来で、トップ当選は間違いなかったでしょうが、涙を呑んでもらいました。
 利口なネズミで仕掛けには簡単にかからず、被害は夏まで続きました。花がなくなると今度は新芽をかじりだしました。被害は数十万円に及びました。
 つがいのネズミで、7月に相次いで捕まえられてからは、全く被害は出ていないのだから恐ろしいものです。ネズミ二匹に振り回された2000年でした。

 というわけで、「人気コンクール」を復活します。持っているだけでよかった時代はとうに終わりました。これからはいかに見事な木を作るかでしょう。
 そのために、みんなが楽しく競い合う、そんな集まりの輪が、少しずつ広がっていったらいいなあ、てなことを夢見ているのですが・・


2001/1/7
 今年の夢の一つに中国春蘭の品種を増やしたいというのがあります。ここ数年価格が安くなったこともあって、中国春蘭は衰える一方でした。品種も乱れて間違いも多くなっています。
 ここにきて少しは見直しのムードがでてきましたが、これを機会に確かなものを一点でも多く集めておければと思うのです。
 幸い「蘭寶ャ史」の日本語版がでたおかげで、ずいぶん助かるのですが、自分が持っているもので違うものもいくつかあるようです。

 毎年棒心の兜ばかり目立ってまともに咲かない「冠春」は「宋梅」と肩を並べるいい花であるとあります。どなたかそんな「冠春」をお持ちだったらご一報願えるとありがたいです。
 他にも持っていない花、違うのではないかといった花はたくさんあります。一度に欲張っても仕方ないので、今年は旧伝の名品に入るものを重点にするつもりです。
 梅弁の「秦梅」荷花素心の「月珮」「常熟素」「洞庭荷素」です。なかでも「月珮」に力を入れたいと思っています。「老文団素」との違いは大荷花形であること、円頭棒心で色は翠緑とあります。こんな素心をどなたかお持ちではないでしょうか。


2000/12/24
 前回、使い古した鉢は蘭がよくできない、という話を取り上げましたが、さっそく反論がありました。三菱瓦斯化学の方で斑入り植物にくわしいNさんからですが、酸素系漂白剤(粉末)を使えば、鉢は再生できるというのです。

 やり方は、お風呂の残り湯(出来るだけ温かい方が良い)に通常の2倍の粉剤を使って鉢を一晩漬ける。こうすれば塩素などが完全に分解されて、目詰まりは解消し、鉢についた汚れも取れると教えてくれました。
 早速実験してみました。ドブ漬けで粉をふいたように汚れていた化粧鉢は、白い粉が浮き上がっていて、削り取ると見違えるように綺麗になりました。いかし楽鉢の方は、外見上は何の変化もなく、汚れた部分を擦っても綺麗になりませんでした。
 汚れていても鉢の機能が再生していれば文句ないのですが、これは使ってみなければ何とも言えません。でも化粧鉢が綺麗になったのは大収穫でした。これでえびねのドブ漬け作りが安心して続けられます。

            ×       ×       ×

 ところで、間もなく21世紀の始まりです。今年の今週の話題はこれで終わります。来年は1月7日からスタートします。どうぞ良いお年をお迎えください。

2000/12/17
 この頃の園芸はプラ鉢ばやりです。東洋蘭の世界でもプラ鉢で作る人が断然多くなりました。安い、壊れない、上手く出来る、と三拍子揃っているのだから無理もありません。
 中身が安くなれば、そうそういい鉢は使えないので、私も最近は結構使っていますが、ちょっといいものになると、やはり抵抗があります。三橋さん(欅窯)の鉢とまではいかなくても、せめて本楽鉢ぐらいには入れてやりたい気がします。

 でも、値段がプラ鉢の10倍以上になるのだから、気安く使ってもいられません。そこで一度使った鉢を何度も利用するのですが、これがどうもいけないらしいのです。
 古くなると鉢の足回りが白くなるのは、塩素がたまってくるからで、鉢に活力がなくなり、蘭の出来が悪くなるという人がいます。そういえば「西湖」が急に勢いを増したのは、新しい楽鉢を使ってからだったような気もします。

 北陸で大々的に蘭を作っている有名な宮崎薫一さんは、植え替えるときは、鉢まで全部新しくしていると、むかし聞いたことがあります。
 蘭は上手に作りたい、プラ鉢は使いたくない、金も掛けたくない―こんな身勝手な主人に、我が家の蘭はどんな気持ちでいるのでしょうか。


2000/12/10
 正直な話、商売をはじめてもう四分の一世紀になりますが、他人から蘭作りが上手いといわれたことはありません。お恥ずかしい次第で、このためにどれだけお客様にご迷惑を掛けているかわかりません。
 杭州寒蘭でお客様の欲しがるものの大半が、展示品だけで売り物なしなんて状態が、二十年経った今も続いているのですから困ったものです。
 増やすのが上手なKさん程の腕があったら、お客様もいま少しは満足していただけたろうし、私も売上を伸ばしてウハウハ、ニタニタしていられるのですが・・

 それはさておき、蘭作りは迷いの連続で、これでよしと言うことは絶対にないような気がします。「蘭は風で作れ」「迷った時は水をやるな」「肥料はやりすぎるな」「植え替えはこまめにやれ」などなど、数えたらきりがないほどの教訓だらけです。
 でも、たまたま自分の作場にあった何かを掴んだ人がうまくいくのでしょう。私のように「これだ」というコツが、いつまでも掴めないものは惨めなものです。展示会のたびに慾と不甲斐なさの狭間で、迷える子羊はメーメー泣いております。


2000/12/3
 千葉の方でえびねの冬の管理法を訊いてきた人がいました。わたしの店でやっている“ドブ漬け法”で大丈夫かというのです。正直な話、私も最初は心配しました。凍ったらどうなるのだろう、根腐れしちゃうのではないかというわけです。

 えびねはちょっと暑がると、すぐウイルスにかかってしまいます。それを防ぐために水漬けにして、風をどんどん送ってやれば、たとえ気温が30度を越していても、えびねは暑がらないはずだと考えたのです。
 夏はこれでうまくいきました。特にニオイとコオズは抜群の出来でした。冬は完全に凍ってしまうことだけが心配でしたが、幸いここ数年の東京は、風さえ避ければ、せいぜいマイナス1〜2度どまりです。そこで不精を決め込みました。

 結果はOKでした。もう5年以上作っていますが、不都合はニオイ、コオズに関する限りありません。水の表面が朝、たまに凍っていることがありますが、まったく意に介してはいないようです。
 他の種類のえびねもだいたいうまくいきます。ジエビネやキエビネでは、深鉢皿に入れると嫌がるのがあるので、浅鉢皿にするとよいでしょう。それと大事なことは、ドブ漬け作りの時は、油粕の固形肥料は絶対に禁物です。


2000/11/26
 「蘭寶ャ史」の日本語訳版がでました。“宋梅を楽しむ会”の水野遵一さんと野坂泰史さんの共訳です。水野さんは今年89歳になられるそうで、それだけでも頭が下がる思いです。 “宋梅を楽しむ会”は、私の蘭の師匠だった中村彌豫二さん(故人)が作った会ですが、私も及ばずながらプロとして、中国春蘭の普及につとめてきました。

 中国春蘭を扱いだして間もなく、お客様の栗岡さん(故人)から「君、これをあげるよ」と「蘭寶ャ史」の原本をいただいたのでした。そのころはまだ価値がわからず、読めもしないのでほっておいたのですが、この本のお陰で私の店の評価がだいぶ上がったことだけは確かでした。

 「月珮」という素心があります。お持ちの方は何人もいらっしゃると思いますが、殆どは「老文団素」か別の素心のはずです。「蘭寶ャ史」によれば、大荷花形の弁はサジ弁になっています。おかげで贋物の「月珮」を買わずにすみましたが、本物もないようです。

 日本語版がでたおかげで早速分かったのが「彩雲同楽梅」です。「西神梅」とよく似ていて非なるもののようですが、本によると1917年に盗難にあって行方知れずとあります。盗難品が海を渡って日本に来て、どこかで増えて出回ったとでも言うのでしょうか。
 ちなみに彩雲は蚕蛾兜、大輔円舌、西神梅は棕櫚うちわ形浅兜、劉海舌だそうです。あなたの「彩雲」はどちらですか。


2000/11/19
 咲くまで順調にいっても4〜5年はかかる「室戸錦」の小苗を、先日、常連のMさんがお求めになった。かつては高値の花だった「室戸錦」が、信じられないような安い値段になっているのですから、手が出て何の不思議もありません。
 でも、私は心の中で思わず叫んでしまいました。「こんな小さいのをやるのですか。大丈夫ですか」

 というのもMさんは、古稀を過ぎた私よりかなり年上なのです。花が咲く前にお迎えがきても何の不思議もありません。私自身この頃は安いなと思っても、小さな木だと考えてしまうのですから。
 元気だった人も、黄昏が迫ってくると、とかく後ろ向きになりがちです。商売もそうです。仕入れを細くして(明日お呼びがくるかもしれないから)守りに入れば、かならずジリ貧になっていきます。

 所詮あっという間の人生なら、後ろを向いてぐじゅぐじゅするより、その日まで前を向いて突っ走る方が、守るより攻めて生きる方が、楽しいに決まっています。
 Mさんが「室戸錦」をどんな気持ちでお買いになったか、私なりに分かるような気がして、ほのぼのとした気分になったことでした。フレーフレーMさん!


2000/11/12
 済みませんがもう一週同じ物をのせます。こらえてください・・

 いま私は怒っています。こんなことってあるでしょうか。まあ聞いてください。ホームページの2日付け「朝・昼・晩」をご覧の方は、杭州寒蘭の花芽つき株のことで、私がどれだけ期待していたかお分かりいただけると思います。

 中国から最初に杭州寒蘭を輸入した時の条件は、花芽つきが5〜6割ということでした。ところが着いた株はオール花なし。ひどすぎると仲介元に抗議、善処してもらって、改めて花芽つきがあれば少しで良いから、大至急取り寄せて欲しいと頼みました。
 先月の26日のことです。来るとしても着くのは今月の中頃と、はじめにいわれていたのが、一週間後の2日には、明日入るという思いがけない連絡。しかも「花芽つきの良い株ばかりを入れた」と言うコメントつきに、大いに期待し感激もして待ったのでした。

 ところが、開けてみてどうでしょう。5束のうち2束が花なしなのです。信じられますか。こんなことがあっていいのでしょうか。重ねての裏切りです。「相手は中国なのだよ。まともに信じる方が馬鹿なんだよ」と何人かの中国通?にいわれました。
 でも、でも、あんまりじゃないですか。杭州寒蘭を生んだ中国とは、これからどうしても仲良くしたいし、出掛けても行きたいと思っていたのに・・ああ、杭州寒蘭が泣いています。


2000/11/5
 いま私は怒っています。こんなことってあるでしょうか。まあ聞いてください。ホームページの2日付け「朝・昼・晩」をご覧の方は、杭州寒蘭の花芽つき株のことで、私がどれだけ期待していたかお分かりいただけると思います。

 中国から最初に杭州寒蘭を輸入した時の条件は、花芽つきが5〜6割ということでした。ところが着いた株はオール花なし。ひどすぎると仲介元に抗議、善処してもらって、改めて花芽つきがあれば少しで良いから、大至急取り寄せて欲しいと頼みました。
 先月の26日のことです。来るとしても着くのは今月の中頃と、はじめにいわれていたのが、一週間後の2日には、明日入るという思いがけない連絡。しかも「花芽つきの良い株ばかりを入れたそうです」と言うコメントつきに、大いに期待し感激もしたのでした。

 ところが、開けてみてどうでしょう。5束のうち2束が花なしなのです。信じられますか。こんなことがあっていいのでしょうか。重ねての裏切りです。「相手は中国なのだよ。まともに信じる方が馬鹿なんだよ」と何人かの中国通?にいわれました。
 でも、でも、あんまりじゃないですか。杭州寒蘭を生んだ中国とは、これからどうしても仲良くしたいし、出掛けても行きたいと思っていたのに・・ああ、杭州寒蘭が泣いています。


2000/10/29
 人間だれにでも射幸心があります。年末のジャンボ宝くじに行列ができるのもそのためでしょう。植物でも山採り株に人気があるのは、大当たりを夢見るからです。
 杭州寒蘭の普及のためには、毎年安定した山採り株が中国から入ってくることが必要です。そんな株を何とか輸入しようと、関係方面に当たっていたら、耳寄りな話が入ってきました。

 杭州からそれほど遠くない福建省のある町で、杭州寒蘭を作っていて、黄業乾さん(杭州寒蘭を日本に最初に紹介した人)が持ってきた昔の花がある可能性が高いようだ、というのです。
 山採り株ではなく培養株ですが、色々調べた結果、賭けてみる気持ちになりました。最近の木と違って、舌の白さ、緑の透明感が一段と深い昔の木がでるなら、たとえ素心は抜かれていても、いいではないかというわけです。

 そんな株が今週入荷しました。花芽付きはほとんどありませんが、杭州寒蘭間違いなしと思える株がほとんどでした。
どうでしょう。挑戦してみませんか。ちなみに花芽付き株で1条2500円(1株だいたい3〜4条)花なしは1条2000円です。よい花が咲くかどうかは保証できませんが、杭州寒蘭と言えない花が咲いたときは補償させていただきます。ご安心を!


2000/10/22
 「豊雪」の花を初めてみたのは、いまから20年ほど前、日本橋の三越でした。三輪咲いていた木でしたが、「これでいくらぐらい?」と店員に訊いたら、胸を張って「一千万円」と応えたのを、今でも昨日のことのように覚えています。

 その「豊雪」がいま数万円で手に入れられます。一千万円のときの「豊雪」は後光がさしていました。いまはそうもいきませんが、素晴らしい花に変わりはありません。
 寒蘭のなかには、高価さの後ろ盾を失った途端に、色あせてしまった花も少なくなかったようです。その意味で価格破壊は、蘭の評価に変化を起こし、同時にお金に惚れていた人たちを遠ざけてくれました。
 これからは本当に好きな人が楽しむ、趣味園芸の時代になるでしょう。ごまかしの「見合い写真」は通りません。名花とは誰が見ても綺麗で、すぐそれと分かる特徴があることです。展示会でじっくりと自分の好きな名花を選びましょう。

 値段は希少さによります。数が少なければ高くなるのは仕方ありませんが、適度な上限があっていいでしょう。
 投機園芸時代は持っているだけで価値はあったけれど、これからの趣味園芸では、いかに上手に作るかが命です。そんな花を持ち寄って、わいわいがやがや、お祭り騒ぎの展示会がやれたら楽しいでしょうね。


2000/10/15
 ホームページで「今週の話題」を始めて、かれこれ一年になります。多分途中でお手上げになるだろうと思ってスタートしたのですが、予想に反して、取り上げる話題に困ったことは、ほとんどありませんでした。
 困るのはうまく書けないことで、できるだけやさしく短くまとめるのに、四苦八苦の連続でしたが。

 「今週の話題」の第1号は、寒蘭の開花が遅れて、展示会が終わってからが実際には本番だ、と泣きを入れている原稿でした。
 展示会にうまく開花をあわせるのは、例年のことですが、悩みの種です。特に愛好団体が催す土、日の展示会などの苦労は、察するに余りがあります。
 当店の寒蘭の展示会は、ことしは25日から始まります。今のところ、いい線行ってるようですが、今度は別の問題で頭をかかえています。

 例年にない夏の暑さで、色が出ないのです。特に西谷物は殆ど全滅で、豊雪は乳白がグリーンに、桃の武陵は茶色っぽい色で、別物の感じです。
 そういえば、開店以来ゆったりした気持ちで展示会を迎えたことはないような気がします。これも園芸屋の宿命でしょうか。
 

2000/10/8
 花芽もだいぶ伸びてきて、いよいよ寒蘭の季節到来です。早いものは今月中旬から咲いてくるでしょう。
 昨日久しぶりにSさんがやってきました。杭州寒蘭が大好きで、マニアの中では“ルーペのSさん”と呼ばれて有名です。
 初花株などを選ぶ時は、株元から花芽、さらに葉先までルーペを使って丹念に調べて「これは緑の色がよさそうだ」「色が澄んだサラサ花かな」とか「覆輪が深くて花形もいいはず」といった具合で、とにかく観察がこまかい。

 他のお客様も、自信ありげに株を選んでいくのですが、残念ながら、ほとんどは当たる確立が三分の一以下。目をつぶって選んだ方がましじゃない?と冷やかされるのがおちですが、Sさんはひと味違っています。
 最近4、5年での当たった確率は、少なくとも5割以上。こうなると「たまたま当たっただけ」では済まされません。特にサラサ花に強く、「孔明山」「白狼山」「岳飛」は大当たりの花でした。
 今年は花のついた株が少ないようで、「少し花つきを集めたい」といっていましたから、あちこちのお店でSさんのルーペ姿が見られることでしょう。なんとなく平和で楽しくなりますね。

2000/10/1
 27日に福岡で行われた東洋蘭の交換会に行ってきました。たまたま翌日えびね業者組合の総会があったので、蘭界の現状を知るチャンスだと思ってのぞいて見ました。
 高知勢などが来ておらず、参加者はいつもより少なかったようですが、それでも元気に声が出て出物を競っていました。

 寒蘭と春蘭の柄物が主でしたが、寒蘭の惨めだったこと。高い値がつけばそれなりのものがでるのでしょうが、安かろう悪かろうで、とても買う気になりませんでした。生産者にはチャンスのようにもみえましたが、所詮安物では魅力なしなのでしょう。
 びっくりしたのは、韓国産春蘭の柄物。ちょっといいなと思うものは、発句から大台(10万円)に乗るのはざらで、反面「軍旗」や「大雪嶺」が、まあまあの柄が出ていて、何千円からのスタートには、つくづく考えさせられてしまいました。

 韓国物の高値がいつまで続くか分かりませんが、はっきり感じたことは、欲しいと思う寒蘭は今が買い時だということです。花のついた立派な株でも買えない値段ではありません。思い切っていかがですか。
 ここからは宣伝。当店が全責任を負う寒蘭の通販を一度利用してみませんか。価格リストは面倒でもメールでご請求ください。

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えびねと東洋蘭の店 すずき園芸