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           2 (2000/4/2〜2000/9/17)
2000/9/17
 「捨てる!」という本がベストセラーをつづけているといいます。先日、瀬戸内寂聴さんが「題名がじつにタイムリー」と誉めながら、いらない書籍類を捨てているのを、テレビでちらりとみました。これは誰もが、多かれ少なかれ悩んでいる問題でしょう。

 私の妹などは、けちな根性も手伝って、物を捨てるに捨てられず、六畳の部屋は四畳半、四畳半は三畳の部屋になって、体を小さくして暮らしています。
 それでいて新しいもの、珍しいものには敏感で、すぐ欲しがるのだけれど、ここではたと思い出すのです。でんと居座っている我が家のごみ。結局はぶつぶついいながら、買うのをためらってしまうケースが多いようです。
 いま、大型補正予算の編成で、良いの悪いのと騒いでいますが、一番問題なのは民需に力強さがないことでしょう。

 そこで提案したいのが、一億総捨てる運動。部屋がすっきりすれば、今度はまたあれやこれやと埋めたくなり、購買意欲が盛り上がって、民需は力強い足取りを見せること必定でしょう。
 植物の方でもご同様。棚をすっきりしてくだされば、もう少し売上が伸びることだろうに、なんて不貞なことを考えたりしています。ごめんなさい。


2000/9/10
 6日から恒例の蘭鉢展示会が始まっています。ことしは欅窯と?窯が出品しています。気に入った杭州寒蘭を、こんな鉢に入れてやりたいなあ、と思うものが何点かあります。

 それにつけても思い出すのは、蘭華譜に出てくる「鉢は蘭の住家なり」と言う有名な言葉です。それがどうでしょうか。最近は蘭が安くなったこと、けっこう上手に作れる、安価である、などの理由で、プラ鉢が大流行です。
 プラ鉢がいけないというのではありません。それがよくできるなら、大いに利用したらいいんです。でもそれで平気で部屋に飾るのはどんなものでしょうか。新鮮で極上の刺身を、パックのままで食べる気にはなりたくないものです。

 いま世界中に流行りだしている盆栽の世界では、古くから中身半分、鉢半分、といわれています。つまり盆栽の価値の半分は鉢の値段だということです。盆栽の世界では当然のことが、東洋蘭ではどうなっているのでしょうか。
 なにも高い鉢を買えというのではありません。自分が愛している蘭なら、入れ物にもそれなりにこだわりたい、と思うのですが、どんなものでしょうか。


2000/9/3
 暑いですね。三週間、休ましてもらったのですが、少しも休んだような気がしません。疲れは貯まるばかりです。この暑さいつまで続くのでしょうか。
 確かことし七月の平均気温は、前の年より2度以上高かったと言うニュースを、聞いたような気がするのですが、八月もご同様、間違いなく暑さの新記録を達成したに違いありません。

 この猛暑が植物にどんな影響を与えるのか。たった1度の違いでも生死にかかわりかねないことがあるのですから、考えただけでもぞっとします。気のせいか、根元から倒れるウチョウランが例年より多いようです。お宅ではどうですか。
 寒蘭の花芽も出るのが遅い感じです。寒蘭は気温が高いところほど、開花が遅くなるといわれますから、今年も展示会の会期で気をもむことになるかもしれません。
 とにかく昼間は、いかに風を通すかだけを考え、日中の蘭への水遣りは一切タブー。日が沈むころになってから、やおら動き出すという毎日が続いています。

2000/8/6
 夏咲きえびねが咲き始めました。例年より開花が少し遅れたのは、梅雨明け後の猛暑に、戸惑ったためでしょうか。
 夏咲きえびねは、殆どいっせいに咲く春咲きえびねと違って、開花にばらつきがあるため、インパクトに欠けますが、花の少ない、しかも花持ちの悪い夏に、一ヶ月から二ヶ月も咲いてくれるので、助かります。

 ただ、夏咲き種には、大きな欠点があって、普及にブレーキがかかっていました。それはカクチョウ蘭さび病にかかりやすいことです。 
 この病気になると、花は開かないままで黒くなり、開いても色が悪く、そのほかにもウイルスに似た症状を見せるので、鑑賞に堪えません。丹精こめて作っても、肝心な時に駄目では厭になりますよね。

 でも、ご安心下さい。クーラーの効いた涼しい部屋に入れてやれば、病気には99パーセントかかりません。高温多湿で大暴れするさび病もここではお手上げのようです。
 乾燥は植物にとって大敵、が常識ですが、夏咲きえびねは例外で、人間に優しい(涼しいところで鑑賞できる)植物なんです。どうぞ可愛がってやってください。


2000/7/30
 10日ほど、私事で店を留守にしました。その間の水やりは他人任せ。というのも蘭はアバウト(おおまか)なので、潅水が二、三日ずれても、一向に苦にしないからです。
 植物の中でも、春蘭、寒蘭は毎日見ていると、前の日とほとんど変わりがないような感じなのですが、さすがに10日空けると、見違えるように成長していました。
 出掛ける前の杭州寒蘭の新芽は、2、3センチだったのが、5センチから8センチにもなっているではないですか。なかでも孤峰、峨眉山、西湖、岳陽、黄玉山など、期待しているものが軒並み逞しいのには、思わずニタリでした。

 でも、痛ましいのもありました。貴重な黄花の黄鶴楼が気息延々になっていました。行く前から具合が悪く、生の水苔で根巻きにしておいたのですが、留守中の高温がこたえたのでしょうか。
それと中間サラサの花果山。去年先芽止まりだったのに、まだ新芽もださず、後ろの葉も完全に枯れていました。
 出掛けなければ早めに手当てできたのにと思うと、ちょっぴり悔やまれます。なんとなく神様ってよく見ているなあ、と苦笑したことでした。


2000/7/23
 数日前、まだ二十代にみえる男の子が来て、天草小蘭を買っていきました。天草小蘭があると分かった時の彼は、まるで恋人に出会ったように、生き生きとした表情を見せました。
 どの園芸店に行っても、高価な蘭は置いていても、天草小蘭や焼葉蘭、鹿児島あたりに自生している小蘭などは置いてなかったそうです。無理もありません。昔ならいざ知らず、今では場所ふさぎで、商売にはならないでしょうから。

 天草小蘭は七、八月にやや小ぶりのサラサ花を、一茎に数輪つけて咲きます。すがすがしい芳香が、しばらく夏の暑さを忘れさせてくれて、私の好きな花のひとつです。数年前に趣味家から分けてもらって作っています。
 といっても、ここ数年はほったらかしで、もう鉢いっぱいになっていました。丁度手ごろな木が別にあったから、若い人は幸運でしたが・・。
 天草小蘭だけでなく、植え替えてやらなければいけない鉢が、ほかにも結構ありました。不精作りなんて、蘭商の風上にも置けませんよね。九月の声をきいたら、早々に植え替えてやろうと思っています。


2000/7/16
 ウチョウランもそろそろ終わりになりました。今年の目立った特徴は、値段が安くなったことと、女性がぞくぞく参加したことでした。
 値段のほうはバイオのおかげで、一本300から500円で、4から5本立ちの作りこみ品が3000円前後で買えるようになりました。理屈抜きに可愛い花ですから、この値段なら、衝動的に手が出てしまうのでしょう。

 ところが、面白いことに、仁王タイプの花はあまり人気がありませんでした。われわれが仁王くずれと言っている花ですが、欲しがるのは、天然もの時代の並花タイプでした。
 仁王タイプだけでなく、昔は貴重だった一点花や連舌花が、今ではごく当たり前のように氾濫していて、かえって並花が珍しくなっているからでしょう。
 初期のバイオは別として、最近の作られた花と天然ものとを見比べた場合、やはり後者に親しみと安らぎを感じるのは私だけでしょうか。
 天然ものの株立ち(20〜30本立ち)が特に評判がよかったのは、嬉しいことでした。これからも株立ち作りを心がけて、みんなで楽しく「人気コンクール」をやれる、本当のウチョウラン時代にしたいものです。


2000/7/9
 インターネットで蘭の情報をあれこれ調べていたら、あるわあるわ、とても半日やそこらで、見切れるものではないことが分かりました。
 特に中国の蘭の事情を知ろうと、教えられたホームページ・アドレスで検索するのですが、今度はなかなか思うようにつながりません。

 「うまくいかないよ」とぼやいていたら、中国春蘭と九華の、中国での価格表をHPからコピーして持ってきてくれた人がいました。
 それによると、中国春蘭は一条が、安いもので平均100元(1元13円)ほど。一番高いのが「緑雲」で2000元、ついで「万字」が600元、「寰球荷鼎」450元、「西神梅」「緑英」が350元と続きます。九華はどれも大体300元となっていました。

 中国人の所得は平均して日本の十分の一だそうだから、蘭はまだまだ高嶺の花のはずですが、中国からは日本に「緑雲」などの引き合いが多いといいます。このところの高度成長に合わせて、急速に蘭ブームになっているのでしょうか。
 「緑雲」は日本では一条一万円台で売られている、なんて噂があるようですが、本当なら、たちまち品不足になること必定でしょう。


2000/7/2
 杭州寒蘭の新芽が出揃ってきました。今年はことのほか新芽の出がいいようで、ニコニコしています。
 「孤峰」「下天竺山」「峨眉山」といった初期の名花は、これまで新芽が出た翌年は、必ずといっていいほどお休みで、二年続けて新芽を上げることはまずありませんでした。
 それが今年はどうでしょう。みんな来てるんですよ。ものによっては二芽も三芽もあがっていて、「西湖」などは押し子をだす勢いです。

 一体どうなっちゃたんでしょう。作場の条件を変えるとか、植え土を工夫したとか、特に例年と変わったことはありません。あるとすれば・・・・・・
 そう、去年の秋からある固形肥料を使い出したことぐらい。えびねでも東洋蘭でも、上手に作っている人は、一様にその肥料でやっていると勧められて、半信半疑で試してみたのですが。
 本当にこの肥料のせいなんでしょうか。例年どおり、きちんと新子を休ませている「月娥」に、もし‘異変’が起こったら、その時はもうダメ、信じちゃうかもしれません。
 

2000/6/25
 10月をめどに「日本中国蘭協会」を作ろうという動きがあるようです。どのような趣旨の会になるのか、細かいことは分かりませんが、沈滞気味の蘭界にとっては、ともあれ結構な話でしょう。

 聞くところによると、最近の中国は裕福になってきて、大変な蘭ブームだそうです。蘭成金も結構いると聞きます。日中合同の展示会が日本と中国で交互に開催されたりしたら、東京ドームの蘭展を上回る催しになるかも知れません。
 すでに立派な活躍をしている中国奥地の蘭協会と、新しい会との関係がどのようになるのか、今後の動きを注目したいところです。

 中国・杭州寒蘭に、大げさに言えば、命をかけているすずき園芸としては、他人事ではありません。プロでなければ、すぐにでも会員になりたいと、手を上げるところですが、ここは静に成り行きを見守るしかないでしょう。
 杭州寒蘭の普及のために、プロが大同団結して、会を作ろうというのなら、真っ先に飛び出すところですがねえ。


2000/6/18
 幻のえびね「タガネラン」が見事に花をつけました。東農大の野生蘭研究会出身のKさんが咲かせたものです。
 タガネランは日本固有のえびねで、大分県のごく限られたところにだけ自生していたのですが、どうしてもその地域を開発しなければならなくなり、保護されて、今は保存団体が大事に管理しているそうです。
 東京山草会蘭部会の人が、その団体のどなたかと面識があり、何人かが分けてもらったのですが、作り方がよく分からず、他の方の成績は、生きているだけというのが現状のようです。

 Kさんも初めは失敗でした。えびねだから水を多くして日陰で作ったのですが、うまくいきませんでした。そこでまったく逆の作りに切り替えてみたところ、これが見事に当たったというわけです。
 ヒゼン、ヒゴ、サツマのような綺麗なえびねと違って、地味で目立たない花ですが、日本の固有種で数も少ないことを考えると、なおざりには出来ません。Kさん、えびねのトンボソウ、これからもどんどん増やしてくださいね。


2000/6/11
 ここ一ヶ月ほどの間に、やりきれないニュースが二つありました。ひとつは高価な蘭が盗まれ、今ひとつは三百匹ほどの緋鯉が一夜にして消えてしまった話です。
 蘭のほうは15鉢で3000万円の被害と、囲み記事で出ていました。バブルの崩壊で価格が大暴落しているいま、そんな高価な蘭がまだあったのかと、大変びっくりすると同時に、むかし私の店も何度か被害に遭ったのを思い出しました。

 高価なものほど盗難はつきもので、被害に遭うのは店の品物に魅力があるからだと、妙な慰められ方をしたものでした。
 緋鯉のほうも一匹2000円で売れるそうだから、一晩で5、60万の稼ぎになれば、一丁やってやるかという事になるのかもしれません。

 でも、先日のMさんは気の毒でした。自分が苦労して山採りしたものや園芸部の生徒たちが交配して作り出したウチョウランから、大好きな杭州寒蘭まで、そっくり盗まれてしまったのです。落胆ぶりは見ていられませんでした。
 家人が昼間ちょっと留守した間の出来事でした。Mさんは純粋のアマチュアですよ。泥棒さん、盗人にも仁義とかいうじゃあないか。どうせ盗るなら、堂々とプロ(商売人)を相手に勝負したらどうなんだい、ええっ?


2000/6/4
 「幻」というトラ斑のウチョウランが、ことしはみごとな柄をだしました。葉はもちろん、花茎にも蕾にもくっきりでています。
 柄ものにはあまり興味がないほうなのですが、「これはすごいな」と思わずうなってしまうくらいですから、驚きです。
 数年前あるマニアから手に入れたものでした。広島にいたころ山採りしたのだと、鼻高々で分けてくれたのですが、その時よりも今年のほうが数段いいようです。
 ただ大変気まぐれな株で、青になったり、柄が出てもほんのわずかだったりで、だんだん作る方もいいかげんになっていました。
 一時は10本以上に増えたのですが、いつのまにか消えてしまって、今はこの鉢の、たった2本だけです。
 人間なんでもかんたんに諦めてはいけませんね。10本あったらいくら儲かったかなんて、獲らぬ狸の皮算用をしては、ため息をついております。


2000/5/28
 自然と野生蘭の6月号に、えびねのウイルスに関して、ショッキングな記事がでていました。事実ならえびねファンにとって大変な朗報です。

 シンビジウム・モザイク・ウイルスのワクチン処理をしたトマトの苗の樹液をえびねに移してやると、えびねはほとんどウイルスに感染しない(発病しない)というのです。
 さらに病気になった株でも、同じ処置をすると、二年も経てばウイルス症状が消えてしまうとあります。これが驚かないでいられましょうか。

 私は25年の経験から、感染即発病とは考えていません。感染しても病気にしない作り方はあると思っています。ここ数年、病気がでたのは全体の数パーセントに過ぎませんから。
 でも、病気になってしまった株は、まだ一本も治ったためしがないのです。6月号の記事はまさにメシア(救世主)の声でした。溺れるものは藁にもすがります。
 いまだに捨てきれないでいる正真正銘の御蔵黄梅に、ケチャップかけちゃったからといって、笑わないで下さいよ。


2000/5/21
 大阪では、通り抜けが終わると初夏、だそうですが、東京の当店ではさしずめ、えびねが終わると初夏、ということになります。
 そして初夏の風物詩は、いうまでもなくウチョウランです。早咲きがポツポツ咲きはじめました。それも二、三年作りこまれた株だから、ことしは見ごたえがあります。

 ウチョウランのよさは、なんといっても株立ちにあります。親、子、孫、ひこ孫と、仲良く寄り添って咲く様が、じつに可憐で、すてがたい風情なのです。
 紅一点花が一本何万円もしていた時は、株立ちなど夢のまた夢でしたが、いまはバイオのおかげで、手軽に入手できるようになりました。

 花付きが5本から10本だちの株立ちで、愛培した物を出し合って、毎年人気コンクールが開けたら楽しいですね。
 来年は豪華な賞品をだして、それに挑戦したいと思います。そのためにも気にいったものがあったら、二、三求めてやってみたらいかがですか。


2000/5/14
 クマネズミの続報です。被害のことを載せたひと坪園芸に、北海道から匿名希望で、防除法を記した手紙が届いたそうです。 それによると、油揚げにエンドックス(殺鼠剤)をまぶしてごま油を掛けるのだそうです。効果抜群で、もしネズミが食べなくなった場合は、くるみ、栗またはカボチャの種を混ぜると、またよく食べるようになるとのことです。 ただ使用場所に制限があると書いてあるだけで、何処に置いたらいいかの説明はありません。多分ネズミの通り道に置けばいいのでしょう。

 クマネズミは外のどこかに棲家があって、夜になると出没して悪さをするようです。部屋を締め切ってからは被害は出ていませんが、これは間接防除法で、敵はスキを狙っています。暑くなってからの部屋の密閉は、大事な植物のためにもよくありません。つい先日も、楽しみにしていたアツモリソウの花をやられて、頭にきていたお客様がいました。とりあえずは間接防除法で防いでおいて、じらしたところで、油揚げをたっぷりいただいてもらいましょうか。祈成功!


2000/5/7
 今年のえびねもそろそろ終わりです。毎年フィナーレを飾る「相牟田紅」(宮崎のジエビネ)が、名残を惜しむかのように咲きはじめました。
 期待によく応えてくれたもの、がっかりさせられたもの、いろいろでしたが、コウズの「紫式部」がことしは圧巻でした。花も大きく、花間もあって大変な人気でした。

 残念なのは、大株仕立てにした木がウイルスに罹ったことです。三年分の古葉を残した見事な木だったのですが、病気がでてしまいました。
 去年は夏が暑かったので、葉もだいぶ痛んだものが多く、病気のことは心配していたのですが、実際に出るとやはりショックです。
 やられたのは古葉を沢山残した大株ばかりでした。葉が多いために風通しがわるくなり、暑い夏に蒸れてしまったのかもしれません。
 イモぶかしのためには、葉が残っているほう(古木ぶかし)が確実に成長が早いのですが、病気をだしては元も子もありません。
 そこで二年前までの古葉は、一枚だけ残して、あとは切ることにしました。 皆様のところではどうしていますか。


2000/4/30
 花形もよくて、これ以上紫の濃い花はない、というNさんのニオイエビネ。前々週にここで取り上げてから、いつ見られるのかと、問い合わせがしきりでした。
そのNさんから27日に電話が入りました。「約束どおり今日持っていくが、残念ながら展示は出来なくなった」というのです。

 びっくりして訳をきいてみると、アブラムシを退治するために、奥さんが花のそばでスプレーしてしまったのだそうです。よくある失敗で、凍傷でやられたというわけです。
 花は無残に萎れていましたが、色の濃さは残っていました。究極の紫というだけの片鱗はみせていました。本当に残念ですがやむをえません。
 Nさんもたいへん恐縮して「来年まで待ってください。今度はご期待に添えるようにしたい」とのことでした。

 Nさんの花はだめですが、それに勝るとも劣らない「御蔵式部」がいま満開です。ぜひお見逃しのないようにご来店ください。


2000/4/23
 17日に鹿児島の霧島園に日帰りで行ってきました。目的は霧島園が集めているニオイエビネがどの程度のものか、この目で確かめたかったからです。
 まだ少し早かったようですが、霧紫香はじめ霧の幻、霧の光、霧のささやき、霧伝説など、どれも見事に咲いていました。
 東京産のニオイエビネを後発で、よくこれだけ集めたと感心しました。おそらく質の点ではトップかもしれません。

  ヒゼン、ヒゴ、サツマの九州で、ニオイに的を絞った霧島園は、気違いか馬鹿ではないかといわれてきたそうですが、ここにきて風向きが変わったといっていました。
 交配種の親として、ニオイの原種の優秀個体をコツコツ集めたのが、結果的に大きな財産となったのです。最近の原種志向が追い風になっています。
 天井が二階ほどもある蘭室で、一坪に九鉢しか置かない贅沢な作り、一鉢一鉢手袋を換える病気対策、なにからなにまで感心することだらけで帰ってきました。


2000/4/16
 開店当初からのお客様で、ここ数年お見えにならなかったNさんが、ひょっこりいらっしゃいました。懐かしさでいろいろ話がはずんでいるうちに、大変面白いことになりました。

 Nさんはニオイエビネが大好きで、トロ箱で実に上手に作る人ですが、これ以上に紫の濃い花はないと、花好きの仲間からいわれている、門外不出のニオイエビネを持っているというのです。
 ニオイというだけでマニアの顔色が変わる昨今、ぜひ展示してほしいと懇望したらOKしてくれました。13日にはまず写真が届きました。見た途端にボルテージが上がってしまいました。
 スマートな花型で、花付きも疎ならず密ならず、花茎もほっそりしています。少なくともトップグループに入る花であることは間違いありません。咲くのは20日過ぎになりそうだ、とのことです。ご期待ください。


2000/4/9
 年をとるとせっかちになって、えびね展は22日からだというのに、春蘭の展示会が終わるのを待っていたように、7日には店内をえびね一色にしました。
 天然もののニオイとコウズです。すでに満開に近いものもありますが、殆どは一、二輪開いたもの。まだ開くところまでいっていないものも五分の一ほどあります。
 見頃はいつごろかと、よく問い合わせがありますが、えびねは一回だけみればよいというものではありません。蕾の時から満開まで、少なくとも複数回は見たいものです。

 天紫梅はまだつぼみですが、その丸々とした紫のふくらみは、明るい明日の展望を予言しているようでわくわくします。
 島の羽衣、天上の青、島の紫、紫王丸、天上白、大納言、空海、朝露、天上の青、どれも大台(10萬以上)にのる花ですが、さすがに貫禄で、出番の備えはOKのようです。
 コウズに惚れた永塚さんが、これ以上の青紫花はないと、新島で見つけてきた「暁星」はいまが盛り。今年も期待を裏切ることなく、すがすがしい色で咲いています。
                                 乞ご来店!


2000/4/2
 先日「ひとつぼ園芸」の安藤社長が久しぶりにみえた。社長の病気などもあってここ五六年は会っていませんでした。
 彼とは「ひとつぼ園芸」創刊以来の付き合いで、かれこれ二十年になります。その間、園芸界の激変にもまれ、病気にも悩まされ、普通なら廃刊に追いやられても不思議ではない状態のなかで、しぶとく生き残ってきたのでした。

 生き残ったといえば、すずき園芸も、もう四分の一世紀を越えました。我ながら驚いています。これまで、かたくなに自然が生んだ野生蘭(原種)にこだわってきたのですが、これからもその方針は変えません。
 「それがすずき園芸のいいところ。こういう店が一軒ぐらいあってもいい」安藤君に盛んにおだてられ、思わずニタリとしたとたん「今月、もう一度広告を付き合ってください」ときた。敵の目的は最初からそこにあったのです。
 これからもお互いしぶとく生き残るためにがんばろうよ、といった手前もあって、結局は押し切られ、えびねの広告を二度出す羽目になったことでした。


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えびねと東洋蘭の店 すずき園芸