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           (1999/11/7〜2000/3/26)
2000/3/26
 日本春蘭展は4月2日までなのですが、どうも最低の展示会になりそうです。花が遅れると見て10日ほど日程をずらしたこと、だいたい花あがり(花付き)が悪かったこと、さらにクマネズミの襲来で、肝心の花が次々と食べられてしまったことの三つが、運悪く重なってしまいました。
楽しみにしていたお客様の人気投票も、中止せざるをえなくなって、本当にお恥ずかしい限りです。

 そんな傷心の私を慰めてくれるのがえびねです。早めに部屋に入れたえびねが、もう咲き出しそうになってきました。コウズの「紅妃」は花芽を2本あげて、赤紫の色を日ごとに濃くしているし、同じく「暁星」の蕾は、青紫の花の特徴であるねずみ色が中からにじみでてきています。
 真っ先に咲いてくれるのは写真のニオイエビネで、25日に撮ったものです。水仙と沈丁花をミックスしたような芳香が、鼻をつんと擽ってくれると、もうめろめろです。
 匂いの魔女と言われるえびねの中でも、ニオイエビネは大魔女。その呪縛から逃れることは到底できません。

2000/3/19
 中国春蘭の展示会のとき、部屋に取り込んだえびねが、もう蕾を見せ始めました。外に置いてあるえびねは、まだ硬いものばかりですが、蕾がみえてくるとわくわく、どきどきします。わくわくは勿論すばらしい花への期待ですが、どきどきはある不安のせいです。

 昨年の夏は気温が高く、特に七月後半から一週間前後がひどい暑さでした。えびねは暑いのが大嫌いで、油断するとウイルス病になってしまいます。
 ウイルスになると、大事な花が色むらを起こして、見られないようになります。花の艶もなくなります。緑花と黄花はそれほどでもないのですが、紫や赤い花は「これがあの花?」と驚くほどの変わりようです。
 ウイルスに罹ったか罹らないかは、新葉が展開してくると分かります。一見斑入りのような、不規則な縞が葉先にでていたら一巻の終わりです。
 葉は綺麗であっても、花がダメというケースもあるから、咲くまでは安心できません。そんなにどきどきさせられるえびねなんか、止めちゃったら、と言われそうですが、まともに咲いた花の美しさをみたら、もうどうにも止まらないのがえびねなんです。

2000/3/12
 中国春蘭に続いて、今月は日本春蘭の展示会ですが、三月という時期は、他にもなにかと忙しいものです。まず寒蘭の植え替えがあります。二三年経っている株は一応植え替えの対象です。
 中でも杭州寒蘭は気を使います。株元が少しでもぐらつくようなら、迷わず空けて見てください。これを怠ってほうっておくと、取り返しのつかないことになります。
 株分けも同時にやります。いい根が二三本あれば古木ぶかしをやります。葉の枯れこみが三分の一程度なら、まずうまくいくでしょう。古木はずしをしなければ、新芽が伸びる時期にまた枯れこんで、タイミングを失います。

 杭州寒蘭の中には、新芽が一年おきというのが結構あります。新芽がくると後ろが枯れてきて、一向に芽数が増えません。そんな場合は、先芽どまりの時に思い切って、先二条、場合によっては先一条で、割ることも必要でしょう。
 ウチョウランも今月から本格的な水遣りが始まります。私は誕生日に合わせて今年も3月8日から始めました。新芽が土をきって来るまでは、乾かしすぎないようにします。


2000/3/5
 先週、ネズミの害で人気コンクールを、やむなく中止にしましたが、皮肉なことに、以来まったくネズミは姿をみせません。ばかにされたようで、なんとも釈然としない毎日です。外から絶対に入れないようにしたのがよかったのかも知れません。この教訓を来年に生かしてがんばりますので、よろしくお願いします。

 台湾からピアナン(和名 カヤバラン)が、少しですが入りました。ここ数年、まったくといってよいほど、輸入されていなかったので、なじみ薄いかもしれませんが、春蘭の中ではピアナンが一番いい花形をしている、という先輩が多いです。未選別株ということですからご期待ください。

 ピアナンは作りが難しいとされていますが、要領さえ分かれば、決してそんなことはありません。
 まず明るさですが、春蘭よりは暗く、寒蘭よりは明るく作るのがコツです。ほとんどの人は春蘭と同じ明るさで作って失敗しています。ピアナンは他の蘭と比べて、暑いのが大嫌いだから、午後の日のあたらないところで、風通しよく作ります。冬は凍らない程度の保温が必要でしょう。


2000/2/27
 きょうから東洋蘭の人気投票がスタートするのですが、困ったことが起こって、残念ながら中止しなければなりません。
 二週間ほど前から、店に飾っている花がなくなったり、一部が落ちていたりする事件が起こったのです。はじめは同じ鉢の中の花が被害にあっていたので、敵はヨトウムシだろうと考えました。ところが鉢を空けてもヨトウは見つかりません。それどころか隣の鉢も、その隣の鉢もやられだしました。

 犯人が何者なのかわからないまま、それでも何かの虫だろうと思っていたのですが、三日前にショッキングな事が起こっていました。雀が砂浴びしたように鉢の土がえぐれて周りに散乱していたのです。いろいろ調べた結果、適はヨトウでなくネズミ、それもいま、猛威を振るっているクマネズミとわかりました。
 以来、人をこ馬鹿にしたように、行動は日ごとに大胆になっています。そんなわけでお客様の蘭をお預かりできる状況ではないのです。本当に申し訳ありません。
 目下、殺鼠剤などで防戦に努めていますが、食べ物にはまったく関心がないようで、食べてくれません。蘭の花にしか興味がない変なネズミ。どなたかいい知恵を貸してください。


2000/2/20
 16日から春蘭展が始まっています。昨年の寒蘭展では半月も開花が遅れて苦労したので、春蘭展も9日からの予定を一週間ずらしました。ところがこれが裏目で、今度は10日以上早すぎました。ままならないものですね。

 ところで、昨日大株の中国春蘭を持ってきて、万字ということで手に入れたのだが、これは宋梅と違うだろうか、と言ってきた人がいました。間違いなく万字ですよ、の答えにホットしていましたが、品種の判別が難しいケースはよくあります。万作で咲いた花とやっと咲いた花では、これが同じものとは思えないほど違うことがよくあります。
 万字は本物が少なく、咲いた花を見ると、宋梅だったり集円、または瑞梅だったりしてガッカリさせられます。別名を「鴛湖第一梅」といって、中国春蘭では宋梅、集円、竜字とともに四天王のひとつです。それだけの実力をもっています。

 万字の大きな特徴は、棒心のかぶとの先端に、咲きはじめから紅をさすこと。他の花にはないですからすぐ見分けられます。お高くとまった女性のように、ツンと上向きに咲くので喉元がみえるのもくせ。この二つが確認できれば、間違いなく万字です。あなたの株は合格ですか。


2000/2/13
 間もなく中国春蘭主体の東洋蘭展が始まります。春の足音を感じさせる芳香が、もうほのかに漂ってきます。皆様のところはどうですか。

 中国春蘭につづいて日本春蘭も来月開催しますが、ご協力をお願いしたいことがあります。それは人気投票を今年も続けることです。期間は2月27日から3月19日までで、今回はテーマを決めません。春蘭であればなんでも結構です。愛培したものを持ち込んで、ぜひ展示していただけると嬉しいです。投票する人は店にきたお客様です。19日に締め切ったあと、翌日発表します。人気bPに選ばれた方には、欅窯の蘭鉢を当店から贈らせていただきます。

 いまさら東洋蘭のよさを云々するつもりはありませんが、手塩にかけた蘭を持ち寄って、楽しく出来栄えを競い合うことが、なによりも大事ではないでしょうか。東洋蘭が高価なうちは、持っているだけでよかったかもしれませんが、いまは「自分も作って部屋に飾りたい」と、見る人に思わせる作りをすることです。日々精進精進ですね。


2000/2/6
 去年の杭州寒蘭は半月以上送れて花が咲きはじめ、今でも元気に咲いているのがありますが、今年の春蘭は例年どおり、早くも遅くもなく、温暖化の影響はあまりなかったようです。もっとも去年の暑さがこたえたのか、花芽が少ないもの、まったくつかないものが多く、日本春蘭が特に影響を受けました。
 お恥ずかしい話ですが、日本春蘭で花芽がきているのは、数えるほどしかありません。他所では上手に作っている人もいるのですから、反省することしきりです。

 中国春蘭は古いのは、200年前から鉢で作られているから、すっかり鉢の生活に馴染んでいます。それにくらべると、日本春蘭はせいぜい半世紀ほどですから、馴染まないものもあって、作りづらいのでしょう。中国春蘭はまず枯れませんが、日本春蘭は突然おかしくなることがあります。
 結果論ですが、日本春蘭の場合は小さめの鉢を使うと、失敗が少ないようです。風通しが今ひとつのときはなおさらです。根ががっちり鉢にへばりつくと、木もよくなるし、ごく自然に花もつけてくれます。


2000/1/30
 中国奥地の蘭で早くから有名なのに「雲南雪素」があります。これは細葉蓮弁蘭の素心で、その淡いヒスイ色の透明感は絶品です。日中友好に尽くした代議士松村謙三が、その功を中国当局から高く評価され、朱徳将軍から、お礼として贈られたのがこの蘭です。雲南植物園で愛培されていたものですが、松村さんはその雪のように白い素心花をみて、迷わず雲南雪素と命名したのでした。

 ところで日中友好条約が締結されてから、最初に雲南植物園を訪れたのが黄業乾さんでした。かれはプロ級のカメラマンでしたから、その腕を見込まれ、在日宣撫員として自由に中国を歩けたのです。
 蘭好きな黄さんが雲南に飛んだのは当然でした。そのとき園長から雲南雪素をプレゼントされたのですが、なぜか帰国の途中、香港で見つけたと話したため、松村さんの花とは似て非なるものとされてしまいました。後に松村さんの息子さんが中国にいって初めて、黄さんの蘭が間違いなく雲南植物園のものとわかったのでしたが・・・。

 ここ数年、雲南雪素が大量に出回っています。細葉蓮弁の素心なら何でも雲南雪素にしてしまうからです。素心に変わりはないのですが、花形、葉姿が微妙に違っています。
 もちろん広い中国のこと、雲南植物園のもの以上によい花があるかも知れませんが、松村雲南雪素の上を行く花は、いまのところないように感じます。花はやや落肩ぎみに二、三花付けるのが普通ですが、一花のときも悪くありません。きりっとした正三角咲きになることが多く、むしろこの方がいいなと思うことさえあります。
蕾はだいぶ膨らんできています。


2000/1/23
 中国蘭といえば、まず「宋梅」です。中国春蘭の代表花として、昔から愛されつづけてきました。発見されたのが浙江省の紹興で、清の乾隆時代(1736〜95)とありますから、いまからおよそ250年前になります。
 宋錦旋という人が見つけたので、正式には「宋錦旋梅」といいます。山採りした時は、今のような梅弁ではなくて、水仙弁に近い花だったようです。

 宋梅は花を見て買え、とよく言われますが、それはこの辺に事情があるようです。まるで団扇のような梅弁の、見事な花に対して、弁先がやや尖り気味の、いまひとつ丸みに欠ける宋梅があるのです。恐らく、長い年月の間に梅弁系とやや水仙弁系に分かれていったものでしょう。
 培養によっても花の大きさや形は変わってきますが、後者の宋梅は立派な木を作っても、花は今ひとつのようです。もっとも、この方がいい、と言う人もいますから、好き好きですね。
 葉姿がみごとで、花茎もよく伸びる宋梅の唯一の欠点は花付きが悪いことです。だから秋の彼岸頃までは、葉がやや黄ばむぐらいまで、明るく作るのがコツです。花芽を確認したら、少し暗めにしておくと花茎もよく伸び、葉も緑を増して、春蘭作りの醍醐味を満喫させてくれることでしょう。


2000/1/16
 正直なもので、中国春蘭が笑い(咲き)はじめてきました。いま「春一品」が長い眠りから目覚めたように、株元で蕾をほころばせ、すがすがしい香りを放っています。
 香りのある花はごまんとありますが、中国春蘭の香りは大好きなもののひとつです。高貴で品があって、しかも控えめで、とにかく素晴らしい香りです。

 日本春蘭にこの香りがあったらどんなに素晴らしいことでしょう。「女雛」や「万寿」や「大虹」などの色花に、この香りがあったら、多分中国春蘭をやってはいなかったかもしれません。天は二物を与えず、とはよく言ったものです。香りのない花は、白痴美をみているようで、物足りません。
 同じようなことを考える人は何人もいて、色もよく香りもよい花を作出しようと、人工交配がいま盛んなようです。これはごく自然な試みで、けちをつける気はさらさらないのですが、人工はあくまで人工、自然の長い営みの中で生き残ってきた天然ものとは次元が違います。

 人工には人工のよさ、天然ものには天然もののよさがあるのだから、好きなほうを選べばいいわけですが、わたしは断然天然ものです。唐突ですが、ウチョウランの世界をみると、自然の最大の破壊者は人間だと思ってしまいます。昔の草姿や花は何処にいったのでしょうか。せめて無差別な交配だけでも控えてほしいものです。

2000/1/9
 糸蘭の蕾がだいぶ膨らんできました。普段なら少し暖めて、今ごろはちらほら咲いているのですが、昨年の後半から時期がずれて、まだ杭州寒蘭ががんばっています。春は春蘭と相場が決まっているのですが、今年はしばらくの辛抱です。

 台湾の春蘭の中で、葉幅が5ミリ以下でU字型のものを糸蘭というのだそうです。糸蘭と春蘭は山で住み分けているとも、物の本にありましたが、長い歳月の間に交雑が進んだものとおもわれます。
 白花で有名な「白雲」や紅花で人気の高い「緋宝」は、花形は糸蘭ですが、葉のほうはどう見ても幅が広くて、糸蘭の風情はありません。花も次第に下顎片がたれさがってきます。

 その点、「山人紅」は葉姿も糸蘭そのもの、花は平肩に近く、後になって垂れ下がることはありません。糸蘭系は葉先が傷みやすいものが多い中で、綺麗な姿を保っています。
 ただ、葉も花もよい糸蘭の欠点は、おおむね花つきの悪さです。「山人紅」も例外でないのが残念です。でも、ご安心ください。今年は花がきています。乞うご期待!


2000/1/2
 明けましてオメデトウございます。今年もよろしくお引き立てのほどお願いいたします。
 さて、年が変わっても寒蘭の話で申し訳ありません。本来なら新春とともに寒蘭はピンボケになり、春蘭ムードになるところですが、ことしは杭州寒蘭がまだ大きな顔をしています。
 年末忙しくてヒマのなかってひとも、まだ十分間に合いますので、早めにお出かけください。
 先週話題にした「奔月」は10日たっても花形は崩れません。青サラサの素舌は、手前味噌ですが、素心花より上のような気がします。三花ついて一番上の花が開き始めたところの写真を、横山進一さんにとってもらいました。

 横山さんは数年前、「東洋蘭の美」という写真集を学研から出したカメラマンです。この本が出るまでの、東洋蘭の写真集は、どれもただの色つきといった代物ばかりだったのですが、この本は絵になっていました。蘭を目の前で実際に見ているような迫力があります。色も限りなく本物に近づき、あるいはそれ以上の、まさに絵なんです。
 残念なのは、この本がすでに絶版になっていることです。東洋蘭界の現状をみると、これから上をいく本が出る可能性は皆無でしょう。
 もし、古本屋でであったら、絶対に買いですよ。本の内容を知りたければ、当店へどうぞ。


1999/12/26
 上海植物園の沈雪宝さんと言えば、日本の蘭マニアで知らない人はいないほど有名。その人が命名したという杭州寒蘭「奔月」(ほんげつ)が入手4年目で咲いてきました。青サラサ素舌の、それは品のある花でした。
 「奔月」と同じ時に入れた無名の紅花素舌は、ことしも花がきませんでしたが、写真では見事で、一日も早い開花がまたれます。ただ、根が杭州寒蘭にしては細いのが心配です。
 たまたま同じころ、別ルートで紅花素舌を入れた人の花がことし咲いたのですが、これは中国寒蘭の紅花素舌でした。もちろん中国寒蘭でも大変貴重ですが、杭州にのめり込んでいる者にとっては、いささかがっかりです。

 そんな時、耳寄りな話が飛び込んできたのです。間違いなく杭州寒蘭の紅花素舌が2タイプあるというのです。常連のお客様の一人が、車を飛ばして某所に見に行ったところ、それはまさに杭州寒蘭だったそうです。
 根も太かったと聞いて、またがっくりきているのですが、「奔月」がすばらしかっただけに、沈雪宝さんが中国寒蘭と杭州寒蘭を間違えるわけがない、と一縷の望みをかけています。


1999/12/19
 杭州寒蘭の咲き始めは、どれもみごとです。「杭州に駄花なし」とはよくいったものです。でも、それからは運命が二つにわかれます。幸運なのは濃色サラサ。一日ごとに色が深みをまして、いつまでも新鮮な驚きと喜びをあたえてくれます。花形でもよければなおさら。
 反面、不幸なのは万歳咲きの花。行儀よく並んでいた棒心が、次第に開いてきて、丁度万歳するような格好になる花のことです。初花株を求めて大当りを狙った夢は、無残にやぶれてしまいます。

 ところが、例外もあるのです。中間サラサの「吉祥山」は咲き始めのままでいたら、間違いなく、手の届かない高嶺の花となったでしょう。でも、次第に万歳してきて期待を裏切るのですが、どっこい土俵際でばんばります。万歳した棒心の覆輪が深く、それはそれで鑑賞にたえる絵になってきます。19日現在、「吉祥山」は万歳の途中です。

 話は変わりますが、ことし当店で売った初花の中から、紅軸青花素舌がでたそうです。どなたが金的を射止めたのか、まだ報告はありませんが、たいへん結構でした。わことのように喜んでいます。コングラチュレーション。


1999/12/12
 「ことしは見事だね。よくこれだけいいものを集めたね」 お世辞でもそういってもらえると、うれしいものです。
 杭州寒蘭、いまがまっさかりです。お客様の協力で、お褒めに預かる展示ができてニコニコしています。こうなると欲が出て、一人でも多くの人に見てもらいたくなるのは当然。
 例年、年末休みを早々ととるのに、ことしは大晦日までがんばるか、なんてチャッカリ考えています。

 いま、たいへん気に入っているのが「九天紅」です。さる有名な杭州マニアの方が集めたものですが、これがまさに「this is koushuukanran!!」なんです。
 黄業乾さん(杭州寒蘭を最初に中国から持ち帰った人)の有名な「下天竺山」と同系の、薄墨サラサで、しかも花形がクセのない美人ときているのです。葉が垂れ葉なので、細い花茎が葉上に抜けて、見事なバランス美です。
 百聞は一見にしかず。このホームページをみたら、すぐに腰をあげてください。

1999/12/5
 「凌雲」という花が注目されています。紅サラサで、先月の末に咲き出したのですが、日に日に濃さと深みを増しています。七、八年前にこの花を見て、古木を分けてもらったのですが、残念ながら枯らしてしまいました。
 当時はあまりショックとも思わなかったのですが、いまは悔やまれてなりません。それほどいい花になっていました。
 花色には艶も不可欠です。二度目に見る「凌雲」は、濃さと深みと艶の三拍子が揃っていて、ひときわ目立っています。今年は花茎が伸びなくて、葉の中で咲いているのが悔やまれますが、来年はきっと期待に応えてくれるでしょう。

 さて、グッドニュースをひとつ。あるマニアから、自分で選別した株の古木なら、譲ってもいいと任されました。十数鉢あります。
 なかには広舌でチャボ咲きタイプ、大円舌、無点系、それに素心もあるようです。評価はこちらに任されていますが、初めて見る花に立派な値段をつけられるわけがありません。そこが付け目です。乞ご期待!


1999/11/28
 待ちにまった杭州寒蘭がやっと咲き始めました。最初はマニアの伊藤さんが推薦した青花「伊藤青」でした。真っ白な舌が目にしみました。
 つづいて「黄玉山」。これは杭州寒蘭の解説でも書きましたが、私の大好きな花です。棒心の白覆輪が深く、花形は一度決まったら、乱れることがありません。この花が咲いてくると、一種の躁の状態になってきます。

 28日現在、咲いてきたのは、他に「西施」「凌雲」「昆明湖」など。「下天竺山」も笑い(咲き)始めました。
 この分だと、12月に入れば見ごたえが出てくるでしょう。ことしの日本寒蘭は発色が悪く、散々の年でしたが、杭州寒蘭は逆のように思えます。青の色は例年より濃いようです。
 12月の第2週から3週にかけてが見頃も見頃でしょう。人々の足を釘づけにした「西湖」(日本にはじめて登場した杭州寒蘭)も、そのころは、ニコニコ笑っていることでしょう。いよいよ時機到来です。


1999/11/21
 温暖化はさまざまな所に影響が出ていますが、最近、寒蘭にも異変がでてきました。あと半月もすれば、花が見られるかなという頃になると、ツボミがおかしくなってきます。
 腰の曲がった老婆のように、くの字になって、内側がケロイド状になり、結局、開かないままおわってしまいます。
 一年間、丹精をこめて作ってきた花が、直前になってそうなっては、無念やるかたない、どうしてくれよう、といった気分になります。

 犯人は、俗にアカダニといわれているハダニ類の仕業のようです。温かいので遅くまで発生し、葉裏から樹液を吸うだけでなく、ツボミにも進出してきたわけでしょう。
 ハダニ類は温暖、乾燥を好むので、湿度を高くすることが大事です。それと水をやるときは、鉢の表面だけでなく、葉裏にもたっぷりかけてやりましょう。ハダニは水に弱いですから。花芽が上がってきてから一、二度、スミソンの1000倍液をかけてやるのも効果的でしょう。
 アカダニ対策はしているのに、ことしは半分以上の蘭がやられたといっている人もいます。なにか新顔の登場でしょうか。桑原、桑原・・・。


1999/11/14
 
西谷ものが冴えません。土佐寒蘭の西谷山は黄花と桃花の産地で、名花が続出しています。かっては大勢の人が採掘にはいり、ブルトーザーまで登場して、山の形が変わってしまったほどでした。いまは入山禁止にして、保護に努めていますが、むかしの寒蘭の山に戻れるのはいつのことでしょうか。

 ことしはその黄花と桃花の色がでません。黄花は青花に近く、桃花は赤っぽくなって、すんだ桃色になりません。高知では展示会に出品する花は、花芽がくると、山の上の共同作場に移します。昼と夜の温度差をもとめるためです。山の紅葉が平地の紅葉より鮮やかなのは、山の方が温度差があるからで、寒蘭も例外ではありません。
 いつまでも温かいことしは、西谷ものにとって、まったく受難の年でした。でも、町なかでうまく咲かせている人もいます。どうやって作っているのでしょうか。


1999/11/7
 今年の日本寒蘭展は散々でした。今日で展示会は終わったのですが、花が咲かず、実際にはこれからが本番といったところです。
 寒蘭の開花は、南へ行けば行くほど遅くなります。台湾では11月下旬から12月、フィリッピンでは翌年の2月に咲くそうです。
 日本ではだいたい早いのが10月中旬、盛りが11月前半でした。ところが、最近は温暖化のせいで遅れ気味。今年は特にひどく、例年より10日以上遅くなっています。
 昼と夜との寒暖の差が、あまりないのもダメで、西谷ものなどは、黄色もピンクも落第点です。花芽がつかない、ついても咲かない、咲いても色が出ない、展示会期の変更など、てんやわんやの寒蘭界のようです。


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えびねと東洋蘭の店 すずき園芸