□ 2、静かな日々 今までにもお客様から、 「ここにパソコンがあれば家で撮った写真もメールで送れるし、いろんなことが出来て便利だから、すずき園芸でも入れたら?」 と言われることは何度かあった。 しかし鈴木社長は古稀を過ぎたところだ。 ビデオの予約もできないし、FAXだって使うたびに戸惑っている第1級のアナログ人間だ。 あの時はおもしろ半分にああ言ったものの、今からパソコンを買って始めるということはちょっと考えられなかった。 一方私の方は、最近自分のパソコンを買って、4月からスクールに通い始めたところだった。 老後のため、ボケ防止(そんな歳か?)のよくあるパターンだ。 まだまだ右往左往している全くの初心者だが、この先役立てられる見こみがあるなら、勉強するにも励みになるし、ちょうど面白くなってきたところだ。 ホームページ以外にも使えることはたくさんあるのだから、導入するならそれに越したことはないと思っていた。 6月のウチョウラン展が終わると、店は一気に暇になる。 このあたりでパソコンを買えば、練習をしたり、データを打ちこんだりするにはいいチャンスなのだが...。 しかし社長は、オッチョコチョイの私のように、すぐ新しいものに跳びつくタイプではない。 経営者として、大きな出費とそれに見合う効果は考えるだろう。 小さい店で、パソコンで処理しなければ間に合わないほどの仕事はないのだ。 社長は来店のお客様に、ホームページを作るかもしれない話をしてみる。 「いいじゃない!やってみたら?」と勧める人あり。 「今のところ効果は期待できないよ」と言う人あり。 1日70人の衝撃は確かにあった。 しかし色々考えると、やっぱりすずき園芸にパソコンというのは無理があるような気がする。 社長もやりたい気持ちはあるらしいが、どう見ても、自分からほんの少しでも近づいていくようには見えなかった。 その後私は、これまで通り自分のためにせっせとスクールに通い、たまにパソコンの話題は出るものの、何も起こらないまま静かな日々が過ぎていったのだった。 |