□ 1、それはあの日に始まった 1999年のゴールデンウィークもいよいよ最後だ。 5月5日にえびね展が終わると同時に、お客も潮が引いたようにいなくなって、棚に並んでいるのは少しくたびれたえびねばかり。 のんびりと椅子に座っているのは同じようにくたびれた三人、鈴木社長とえびね展の間来ているH氏と私(白石)。 そこに、こういう店には珍しい若い女の子が入ってきた。 「きれいですね!」 「こんなすてきな店があったなんて知らなかった!」 しばらく説明を聞きながら店内を見たあと 「写真を撮ってもいいですか?」 「こんなもの撮ってどうするの?」 「ホームページにのせるんです。」 がぜん興味をそそられた私達。 こちらはちょうど退屈していたところだ。 「へえー、自分のホームページを作っているの! どんなことをのせているの?」 「街を歩いていて気に入った店を見つけたとか、珍しい鳥を見たとか、デジカメを持ち歩いて写真を入れて、その日の出来事を書いてるんです。」 「そんな普通の人の、個人的なホームページを見る人いるの?」 といささか失礼な質問に、 「ええ、1日に70人位アクセスがありますよ。」 「えーっ!70人も!」 思わず三人は顔を見合わせたのだった。 この小さな店に毎日70人もお客が来たら、押すな押すなの騒ぎではないか。 そのホームページにのせてくれるというのはうれしいが、えびねはもう花が終わりで、とても写真として出せるようなシロモノではない。 しおれかけた花の写真では、すずき園芸のイメージダウンだ。 「もっと盛りのときに見て欲しかった。 本当はこの何倍もきれいなんですよ。 こんなくたびれた花を撮っても仕方が無いから、来年の展示会の時又いらっしゃい。 いくらでも撮らせてあげるから。」 と撮影はやめにしてもらった。 そして女の子が帰った後、 「ホームページってそんなに見る人がいるのか!」 「すずき園芸でもパソコンを買ってホームページを作ったらいいんじゃないか!」 という話が大いに盛り上がったのだった。しかし...... |